刑務所の話 その1

世界一受刑者に優しいと言われる、ノルウェーのハルデン刑務所を取り上げた、番組を見ました。

刑務所には格子がなく、受刑者は全く普通の暮らしを、刑務所内で過ごすことができます。

建物の内装も立派です。

受刑者の部屋は個室で、テレビもDVDもあります。

小さなスーパーもあって、受刑者はそこで買い物をし、自分たちが食べる物を、自分で調理して食べるのです。

当然、殺人犯のような重大な事件を、起こした者もいます。

でも、お互いに相手が起こした事件など、全然気にしない様子で、みんな和気あいあいとしていました。

気の合う者同士で、ゲームをしたり、歌を歌ったり、ラジオ局までが入って来て、彼らの声を国民に届けています。

毎週末、刑務所を訪れた家族と、自分たちだけで過ごすことができる建物もあり、生まれたばかりの子供を、受刑者が腕に抱くこともできるのです。

日本人で言えば、遠方に単身赴任している夫と、週末に会う家族のようですね。

そこには監視がまったくないので、悪巧みをしたり、薬物を持ち込むことも可能ですが、基本的に受刑者たちは、信頼されている形です。

こうした人間的な扱われ方は、実情を知らずに入所した受刑者を、戸惑わせるようです。

普通は、刑務所とは罰を受ける所であり、嫌な場所だと思われているからです。

また、実情を知っている者の中には、この刑務所に入ることを、警察と交渉した者もいます。

麻薬の密売をしていた受刑者は、この刑務所で勉強をし、資格や技術を手に入れて、外に出ることを目指していました。

彼が言うには、何もないまま外へ出ると、きっと同じことをしてしまうが、もうそんなのは御免だから、ここで勉強をするのだそうです。

ごくわずかながら、所内で自殺をしたり、脱走をする者もいるようですが、ほとんどの受刑者は、この刑務所を好意的にとらえています。

そして、この刑務所を出所した者たちの再犯率は、かなり低いと言われています。

ただ問題は、これだけの刑務所を造るのに、多額の費用がかかることと、受刑者全員に快適な暮らしを提供することに、国民全員が納得しているわけでは、ないということでしょう。

それでも、そうせざるを得ない事情が、ノルウェーにはあるのです。

と言うのは、ノルウェーには死刑も終身刑もありません。

どんなに重大な事件を起こしても、いつかは必ず、受刑者は社会に出て来るのです。

と言うことは、再犯率をいかに下げるかという事が、一番の問題になります。

そのため、感情は脇に置いて、様々な取り組みを試行錯誤する、必要があるのです。

犯罪に巻き込まれた側からすれば、受刑者が罰を受けずに、快適な暮らしをしていることに、違和感を覚えることでしょう。

下手をすれば、被害者よりもいい暮らしを、させてもらっているかもしれないのです。

それに国が犯罪者を罰しないのであれば、自ら手を下して、犯罪者を罰してやると考える人が、現れるかもしれません。

再犯率が低いことは、大いなる魅力ではありますが、被害者の個人レベルでは、再犯率などどうでもいい事でしょう。

要は、犯罪というものを、個人レベルで見るのか、社会レベルで見るのか、という事です。

社会レベルでの視点を優先するのであれば、国や自治体は被害者のフォローを、責任持ってしなければなりません。

ただ、この問題が教えてくれているのは、刑務所の話だけではないのです。

人間的な扱いをされることで、再犯率が減るということは、受刑者たちは犯罪を犯す前は、人間的に扱われていなかったと、見ることができるでしょう。

彼らが初めから人間的に扱われていたならば、彼らが犯罪を犯すこともなかったということです。