はらぺこあおむしと風刺画

「はらぺこあおむし」は、子どもたちに大人気の絵本です。

著者のエリック・カール氏は、つい先月91歳で亡くなられました。

この「はらぺこあおむし」が、毎日新聞の風刺画に利用されたことで、波紋が広がっています。

風刺画の内容は、絵本の表紙に描かれた「はらぺこあおむし」の顔の部分を、IOCのバッハ会長に換え、放映権と書かれたリンゴの実ならぬ、ゴリンの実(恐らくは五輪の実)を、仲間が食べている絵が描かれています。

風刺画の左上には、「エリック・カールさんを偲んで…」と書かれ、タイトルは「はらぺこIOC(あいおーしー)とありました。

「あおむし」と「あいおーしー」が似ていると思ったのでしょうね。

この風刺画に対して、「はらぺこあおむし」を日本で出版している、偕成社の社長から毎日新聞に対して、痛烈な抗議文が寄せられました。

その抗議に対して、全くそのとおりだと怒りを顕わにする人もいれば、IOCのしていることは、まさにこのようなことだと、風刺画を受け入れている人もいて、賛否両論のようです。

また、テレビのコメンテーターの中には、著者が文句を言うならともかく、何故出版社が著者に代わって文句を言うのかと、言う人もいましたが、出版社には出版権があるから、文句を言えるのだと言う人もいました。

このことに限りませんが、何かがあると、とにかくいろんな意見が出るものです。

それは、それだけ多くの視点や立場の違いが、あるということなのですね。

確かに、著者であるエリック氏が生きていたとして、この風刺画を見た時に、これを問題視したかどうかはわかりません。

外国の方なので、日本人よりは風刺に寛容であるかもしれません。

ただ、絵本というものは、著者だけのものとは言えません。

それは絵本に限らず、多くの文芸書もそうだと思いますが、公にされた絵本や本などの作品は、それを気に入って愛する人たちのものでもあるのです。

それらは、その人たちの心の一部になっているのです。

偕成社の社長は、著作権とか出版権ということではなく、「はらぺこあおむし」を愛する者の一人として、この絵本を愛している人たちを代表し、抗議したのでしょう。

それなのに、法律的な権利や罰則の話に固執したり、風刺なのだから少々のことは多めに見ろよ、というような考えがあるのは、ちょっと違うのではと思います。

もちろん、いろんな立場がありますので、誰がどのように考えるかは、その人たちの自由です。

でも、いい世の中を作りたいと思うのであれば、法律でどう書かれているかに関係なく、他の人たちの心を、傷つけないような言動を、常に模索するべきでしょう。

風刺と言えば、何でも許されるという考えは、オリンピックと言えば、何でも許されるという考えと、同じことです。

一般の人たちの気持ちを尊重しようとせず、自分たちがやりたいようにする、IOCを批判する風刺画が、「はらぺこあおむし」を愛する人たちの気持ちを尊重しないのは、皮肉なことです。

私から見れば、どちらも同じ穴のむじなですね。

自分の目的を達成するために、誰かを犠牲にするというやり方は、絶対にやめないといけません。
いい世の中を作りたいのであれば、という前提つきですが。

これは新聞の風刺画という、人々の目が集まる事例なので、問題とされました。

しかし似たようなことは、私たちの日常の一コマでも、よく見られるのではないでしょうか。

タバコや空き缶などのポイ捨てや、人が寝静まっている所での大騒ぎ、客だから何をしても許されるという誤解、迷惑を考えない路上駐車。

挙げればきりがありませんが、こういうことも、今回の風刺画と同じことです。

いい世の中を作りたいのであれば、そういう所から見直して行く必要があるでしょう。

今回の風刺画の問題は、そういうことを教えてくれた事例だと思います。