卵の殻 その2
人間社会で誰も疑うことがなかった、常識や価値観は、目に見えない卵の殻なのです。
これらの固定的な考え方は、人間を一つの枠に閉じ込めてしまいます。
その枠の外のことを、考えることを許しませんし、枠にはまらない者を、社会に適合できない人間だとみなします。
それは、この枠を創った者たちにとって、不都合なことだからです。
多くの人々は、枠によって洗脳されています。
映画「マトリックス」に出て来た、架空の世界に生きる人々のようなものです。
安定した暮らしが、保証されていると信じ込まされ、支配者の望み通りに動く人間に、仕立て上げられているのです。
人々を支配するのに、宗教が利用されることがあります。
多くの人は、神の名の下に事件を起こす者たちを見て、洗脳されていると思うでしょう。
実は自分たちも、宗教とは別の信念に、洗脳されているのです。
でも、洗脳されている者は、そのことに気がつきません。
それでも中には、洗脳が効かない人たちがいて、卵の殻を打ち破ろうと藻掻きます。
だけど、この人たちも自分が卵の殻に閉じ込められいると、しっかり認識できているわけではありません。
とにかく、窮屈さから逃れようとして、藻掻くのです。
結局、藻掻くばかりで、殻を破ることができず、心身を病んだり、死んでしまったりする人がいます。
しかし、一方で偶然に殻を打ち破ることに成功し、清々しい新しい世界を、発見する人もいるのです。
そして、今や新しい世界を発見する人が、増えて来ています。
そういう人たちの存在は、見えなかった卵の殻が、他の人々にも見えるようにしてくれます。
自分が殻の中に閉じ込められているのだと、気がつくことさえできれば、その人は殻の外へ出ることを目指すでしょう。
未だに殻の中にいながらも、そこから出ようと四苦八苦している人が、大勢いるように感じます。
魚の卵から、幼魚が孵化する場面を、テレビなどで観たことがありませんか。
初めは数匹が、ちょろちょろと孵化し始めるのですが、やがて全体が次から次へと、一斉に孵化を始めるのです。
人間も今、そんな状況にあるように思います。
自分が何をすればいいのかわからない、自分が社会の何の役に立つのかわからない。
そんな風に思う人は、少なくないでしょう。
でも、何も特別に考える必要はありません。
自分が好きなように、自分が思ったとおりに、生きればいいのです。
誰かのためにと思わなくても、見てくれている人は、必ずいます。
そして、自由に生きる生き方が、そういう人たちに刺激を与え、その人たちが卵の殻を破るための、大きな力となるのです。
具体的に何をするのかが、重要なのではありません。
自由に生きるということこそが、重要なのです。
卵の殻の外の世界が、どんな世界なのかは、もう想像がついたと思います。
そう、それは自由で多様性に満ちた、喜びの世界なのです。