体外離脱体験2
学生の頃、ひょんなことから、体外離脱を体験した私は、体外離脱を意図的に行えないかと、体外離脱について書かれた本を参考に、何度か挑戦をしました。
どういう時に体外離脱が、起こるのかと言うと、眠りと覚醒の中間状態です。
体は眠っているけれど、意識はまだ、目覚めている状態の時です。
金縛りの状態に似ていますが、金縛りの時は、緊張してしまうせいでしょうか、体を抜け出すことはできません。
意識ははっきりしているのに、肉体は動かせませんし、意識の体も動きません。
これは自分の意図に反して、そんな状態になってしまうため、驚いてしまうのでしょうね。
自分で体を抜け出そうとしている時は、わかってやっていますので、似たような状態になっても、気持ちは落ち着いています。
どんな風になるのかと言うと、最初は足の辺りが、軽くビリビリと、痺れたような感じになるのです。
でも、長時間正座をして痺れるのとは、違います。
そんな苦痛な感じはありません。
ただ、軽くビリビリした感じがするだけです。
正確に言えば、痺れているというよりも、細かく振動しているような、感じかも知れません。
その振動している部分は、通常の感覚が、麻痺した感じです。
そこで驚いたり、慌てたりすると、我に返ると言いますか、ビリビリ感は消えてしまい、普通の状態に戻ってしまいます。
それは、野生の動物や鳥たちが、安全かどうか確かめながら、少しずつ近づいて来るような感じです。
ちょっとでも動いて、驚かせてしまうと、さっと逃げ出して、姿を消してしまいます。
とにかく、ビリビリした感じが起こったら、そのまま放置して、様子を見ておきます。
すると、ビリビリ感は次第に、上の方へ広がって来ます。
足から太もも、腰からお腹、胸から背中と、ビリビリした感じが広がるのです。
ここで体を、抜け出そうとしてはいけません。
まだ機が熟していないのに、体を抜け出そうとすると、意識の体ではなく、本物の体が動いてしまいます。
肉体の体が少しでも動いたら、ビリビリ感は瞬時にして、消えてしまいます。
一度消えてしまったビリビリ感が、もう一度戻って来るのは、むずかしいのです。
慣れている人なら、そんなことはないかも知れません。
でも、素人の場合、そこで完全に目が覚めてしまうか、再挑戦しているうちに、眠ってしまうことの方が、多いと思います。
とにかく、ビリビリ感が首の辺りまで広がって来ても、知らんふりをして、放っておきます。
すると、ビリビリ感は頭の先まで広がります。
足先から頭のてっぺんまで、すっぽりとビリビリ感に包まれた感じになるのです。
この時も、まだ動いてはいけません。
早く体外離脱を経験したくて、動いてしまうと失敗してしまいます。
この時に抜け出そうとすると、一瞬、体を抜け出せたような、感じにはなるのです。
でも、意識のどこかが肉体に癒着していて、完全に抜け出すことはできません。
背中に強力なゴムでもつけられているみたいに、すぐに引き戻されておしまいです。
肉体と意識がビリビリ感に完全に馴染んで、熟した状態になるまでは、ピクリとも動いてはいけないのです。
何度も同じような失敗を繰り返しながら、私は完全に肉体から、意識を離脱させることに成功しました。
その時の感覚は、初めて離脱した時と比べると、もっとリアルな感じでした。
本当に離脱したのか、疑わしくなるほどです。
部屋にはスチールの机があるのですが、その机に触れることができました。
幽霊のような存在になっているのであれば、手が突き抜けるはずです。
でも、手は突き抜けず、机に触れてその形状を、確かめることができたのです。
しかも触った感触が、肉体の手で触れるのと、全く同じでした。
机は硬くてツルッとしていて、冷たいのです。
おかしいなと思いながら、机を押してみましたが、硬くて手は突き抜けません。
私は窓から、外へ出てみようとしました。
でも、やはり窓が邪魔です。
それでも、意識の体だから、必ず突き抜けて行けるはずだと、私は思いました。
そこで、水の膜を抜けるような、イメージで挑戦してみました。
すると、あららという感じで、体は窓を通り抜けました。
その時は明け方で、外は明るくなっていました。
体外離脱の練習を、私はよく寝入りばなにしていました。
でも、そのまま眠ってしまうことが、ほとんどでした。
一方で、明け方にふと目が覚めた時は、チャンスでした。
そのまま動かないでじっとしていると、あのビリビリ感が現れることが、あったのです。
そして、この時もそんな明け方でした。
私は窓の外にある、一階の屋根瓦の上に、裸足で立っていました。
普段見るのと同じ景色が、目の前に広がっています。
外には、まだ誰もいませんでした。
そよ風が気持ちよく、本当に肉体で、そこに立っているかのようです。
感覚的には、普段の世界と何一つ変わりません。
本当に体外離脱をしているのか、疑うほどでした。
その時に、ふと私は視線を落とし、そこに立っている、自分の姿を見たのです。
瓦の上に立つ足は、裸足です。
その上には、寝る時に来ていたはずの、パジャマがありません。
私は何と、パンツ一枚の姿で、屋根の上に立っていたのです。
感覚は肉体の時と、何も変わりません。
体外離脱をしないで、そこに立っているかのようでした。
私は焦りました。
自分では、体外離脱をしたつもりでした。
でも、もしかしたら体外離脱を、していないのかも知れない、と思ったのです。
窓を突き抜けて、外へ出たはずなのです。
だけど、本当はそれは妄想で、実は普通に窓から、外へ出ただけかも知れません。
そう考えると、どうしようとパニックになりました。
だって、そうでしょう?
パンツ一枚で、早朝の屋根の上に、立っているわけですよ。
もし誰かに見られたら、完全に頭がいかれていると、思われてしまいますよね。
下手をすれば、そこに住めなくなってしまいます。
これは大変だ、早く部屋に戻らないと、と焦っているうちに、はっと気がつくと、私は蒲団の中にいました。
私はちゃんと蒲団を、かぶって寝ていました。
蒲団を剥いでみると、パジャマもちゃんと着ています。
しまった、やっぱり体外離脱ができていたんだと、後悔したけど、後の祭りでした。
もう完全に目が覚めてしまったので、どうにもできませんでした。