自分を許す その4
誰かを傷つけることで、自身も深く傷ついてしまうことがあります。
でも、傷つけたのは自分の方なので、責められることはあっても、慰めてくれる人はいません。
やってはいけないことを、やってしまった後に、我に返ってうろたえることも、あるでしょう。
世間から見て、自分は最悪の人間だと思えてしまい、自分で自分を責めたり、罰しようと考えます。
確かに、実際にやってしまったことに対しての、責任というものは生じます。
それに対しての、反省は必要です。
自分を許すというのは、反省をしなくてもいい、という意味ではありません。
しかし、自分を憎んではいけません。
悪いことをしてしまった自分さえも、自分で否定することなく、そのまま受け入れる必要があります。
繰り返しますが、反省をしないという意味ではありません。
これについては、自分や世界についての、深い理解が必要です。
最も大きな問題は、人生は一回こっきりで、やり直しが利かないという考え方です。
確かに、同じ人生は一回こっきりかもしれません。
でも、人間が何度も生まれ変わりを、繰り返す存在であるならば、人生は一回こっきりとは言えないでしょう。
今世で罪を犯した人を、強く憎んでいる人も、別の人生では、それ以上の悪いことを、しているかもしれません。
人間というものを、繰り返される多くの人生の、それぞれの人格をひっくるめた、もっと大きな意識だととらえてみて下さい。
本当の自分とは、その大きな意識のことであり、今の人生における自分は、本当の自分の一面に過ぎません。
本当の自分の意識に立って、今の人生で起こっていることを眺めてみれば、その受け止め方が、がらりと変わるはずです。
全ての経験は学びであり、自分が成長するための糧であると考えれば、自分を憎んでも仕方がないことが、わかると思います。
本当の自分が求めていることは、そんなことではないのです。
でも、自分がやった事に対して、何の反省もなく、何の責任も感じなければ、それは何も学び取れていないわけですから、人生が無駄になってしまいます。
これもまた、本当の自分が求めていることではありません。
やった事に対しては、深く反省をし、自分が傷つけた人だけでなく、自分と同じような境遇の人へ、想いを馳せることが大切です。
こうして考えると、自分を許すということと、他人を許すということが、同じ意味であると理解ができるのではないでしょうか。
逆に言えば、他人を批判したり、否定したりする人は、実は、自分のことが大嫌いなんですね。
他人を許せないということは、自分自身を許せないと、表明しているのと同じです。
何がよくて何が悪いのか。
その判断基準は、全てこの世界で作られたものです。
でも、本来の私たちは、この世界を越えた、もっと大きな存在です。
狭い価値観に縛られるのではなく、もっと高い視点に立って、物事や自分自身を見つめることが肝要です。
自分を許すということは、本当の自分を知る、ということでもあるのです。