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ごんぎつね

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童話作家、新美南吉が書いた「ごんぎつね」

絵本にもなっているので、読まれたことがある方は、多いと思います。

絵本もいろいろありますが、私のお気に入りは、黒井健さんが描いた絵の「ごんぎつね」です。

※ 偕成社「ごんぎつね」新美南吉 作 黒井健 絵

これは独りぼっちで悪戯好きな、子狐ごんのお話です。

ざっと紹介しますと、次のような内容です。


悪戯ばかりしているごんは、ある日、村の兵十(ひょうじゅう)が川で魚を獲っているところに、出会します。

悪戯をしたくなったごんは、兵十がその場を離れた隙に、兵十が捕まえていた魚を、全部川に逃がしてしまいます。

一番最後に逃がそうとしたのは、大きなうなぎでした。

うなぎに首に巻き付かれ、四苦八苦していると、気がついた兵十が戻って来たので、ごんは慌てて逃げ出します。

数日後、ごんは兵十の母親が、病で亡くなったことを知りました。

あのうなぎは、兵十が母親に食べさせたかったものなのでしょう。

自分と同じ独りぼっちになった兵十に、ごんは毎日山の栗や松茸などを、こっそり届けるようになりました。

ある日、物置で縄をなっていた兵十は、家の中に狐が忍び込むのを目撃します。

あの悪戯狐のごんだと思った兵十は、火縄銃を用意して、家から出て来たごんを撃ちます。

ばったり倒れたごんの所へ、駆け寄った兵十が目にした物は、土間に置かれた栗でした。

「ごん、お前だったのか」と言いながら、兵十はまだ青い煙がでる銃を、取り落とします。


何とも切ないお話です。

私は子供の頃から、この話が好きでした。

今でも、この話を読むと、涙が出そうになります。

先日、テレビでこの作品を紹介する番組があったので、つい懐かしく思い出し、この話がしたくなりました。

主人公は、悪戯好きな子狐と、素朴な孝行息子の兵十です。

人間の世界では、ごんも兵十も、どこにでもいそうな存在です。

ちょっとした悪戯が、大変なことにつながったり、そのことを本人なりに、懸命に償おうとしたり、一時の感情だけで、物事の裏を確かめず、怒りを爆発させてしまったり。

人の世でも、よくあることです。

あとになって、どういうことだったのかとわかった時に、愕然とするのは、ごんも兵十も同じであり、しょっちゅう私たちが、繰り返してしまうことでもあります。


新美南吉がこの話を書いたのは、18歳の時だそうです。

その若さから考えますと、この話は教訓的なものとして書かれたのではなく、新美南吉自身が感じた、世の中の切なさを表現したものだと思います。

つまり、彼の心の世界そのものです。

だからこそ、子供から大人まで、長い時を経ても、この作品の人気が絶えないのでしょう。

まだ、お読みになったことがない方は、ぜひ読んでみて下さい。

必ず、心に響くものがあると思います。