弱肉強食 その1
弱いものが、強いものの餌食になることを、弱肉強食と言います。
ネズミやウサギが、キツネに捕食されたり、小魚が大きな魚に食べられたり、小鳥がワシに襲われたりと、弱肉強食と表現されるような場面は、いろんな所にあります。
しかし、体の大きな生き物や、攻撃力のある生き物が、強い生き物で、捕食される側の生き物が、弱い生き物だと決めつけるのは、問題があります。
たとえば、人間は野生の動物と比べると、とても非力です。
日本では、毎年山に入った人が、クマに襲われる事件が起きています
最近では、餌がないためか、クマが里に下りて来て、人が襲われるというケースもあります。
このように、まともにクマと戦えば、人間に勝ち目はありません。
しかし、人を襲ったクマは殺されますし、人間がその気になれば、山のクマを絶滅させることも可能です。
それは、人間には強力な武器や、クマの動きを察知する技術があるからです。
その生き物が強いか弱いかを判断する時、その生き物が作り出す環境も含めて、考えなければなりません。
また、強力な感染症に罹患すると、クマも人間も死んでしまいます。
感染したウィルスや細菌は、感染した生物の中で増殖し、細胞を破壊します。
生き物には免疫力がありますが、免疫力が機能しなければ、ウィルスや細菌に太刀打ちできません。
では、ウィルスや細菌が弱肉強食の強者になるのかと言うと、そうではありませんね。
いかに強力なウィルスや細菌でも、全ての生き物を殺すことはできません。
そのようなウィルスや細菌に対する、免疫力を持つものがいるからです。
サメは小魚を捕食しますが、サメが死ぬと、その体は小魚の餌になります。
何が強くて、何が弱いのか、どの視点から見るのかで、その答えは変わって来ます。
ちなみに、「弱肉強食」という言葉が、英語では何と言われるのか、辞書で調べてみました。
すると、the jungle law とありました。
ジャングルのルールということですね。
英語圏の人たちは、野生の生き物たちについて、そのように見ていたということでしょう。
確かに、捕食するものと、捕食されるものが存在するので、それが自然界のルールのように思えてしまうのですね。
ただ、肉食動物が強者で草食動物が弱者である、というような見方は間違っています。
同じ生き物でも、その生き物が置かれた環境や、体の状態などによって、強者にもなれば弱者にもなります。
トラだから強者だとか、シカだから弱者だと、決めつけてはいけません。
植物は根から養分を吸収し、葉で光合成を行います。
食虫植物のように、虫を捕らえる植物もいますが、大半の植物は捕食をしません。
捕食はされても、捕食はしない。
これは動物同士の関係とは、全く異なるものですね。
まるで、動物たちが生きて行けるように、土の中や大気中にある分子を、動物が取り込めるような形に、作り直してくれているようです。
慈愛ですね。
植物も生物ですが、弱肉強食の弱者というより、慈愛に満ちた母親という方が、しっくりするように思います。
自然界の生き物たちの関係を、どのように見るのかは自由です。
でも、弱肉強食という言葉で、一括りにするのは無理があるでしょう。