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IPS細胞による治療

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受精卵の分裂から生まれた細胞は、体の様々な部位や組織で働く細胞へと、姿を変えます。

これを細胞分化と言います。

たとえば、脳や脊髄などの細胞は神経細胞ですし、筋肉の細胞は筋細胞です。

皮膚や粘膜には、それぞれの上皮細胞がありますし、血液には、赤血球や白血球などの血液細胞があります。

眼球の中には、網膜に光を感じる細胞があります。

鼻の中には匂いを感じる細胞があります。

舌には味を感じる細胞があります。

これらの細胞は、全て形も働きも異なりますが、元は同じ受精卵から生まれたものです。

つまり、それぞれの細胞に変化するまでは、同じ形態の細胞だったわけですね。

この、まだ役割を決めていない細胞を、人工的に作ったものが、IPS細胞と呼ばれています。

このIPS細胞を分化させれば、どんな細胞でも作れるのです。

これはとても画期的なことで、一度傷つくと元には戻らないと言われていた、脳や脊髄の怪我や病気、あるいは心臓の筋肉などを、再生できる可能性ができたのです。

世界で初めてIPS細胞の作成に成功したのは、京都大学の山中伸弥教授のグループです。

アメリカなどでは、せっかくいい治療方法が見つかっても、それについての特許権を盾にして、莫大な金額が請求される傾向があります。

お金がなければ、その治療方法を使うことができないわけです。

そのため、IPS細胞の特許は山中教授が取得しています。

世界中の研究者が自由に研究できるようにし、全ての患者にその恩恵が届くようにするためです。

これは本当に素晴らしい精神であり、医療に携わる人々の模範です。

その山中教授の思いが、IPS細胞による治療という形となって、動き始めています。

既に始まっているのは、加齢黄斑変性症という目の網膜の病気と、パーキンソン病への細胞移植です。

また、進行性骨化性線維異形成症や、筋萎縮性側索硬化症、家族性アルツハイマー病の患者の細胞から作ったIPS細胞を用いて、研究した薬の治験も始まっています。

そして今回、角膜が混濁する水疱性角膜症や、脊髄損傷の患者にも、 IPS細胞による治療が行われることになりました。

近い将来には、心筋梗塞などで壊死した、心臓の筋肉を再生させる治療が、始められる予定だそうです。

また、一つの臓器を作って移植することも、いずれは可能となるでしょう。

そうなれば、臓器移植ができるようになるため、移植のために望みもしない誰かの死を、待つ必要がなくなるのです。

夢が大きく広がるIPS細胞は、今後も活躍の場を広げて行くことでしょう。