美しさに隠された罠
看護士さんは天使のような人ですね。
こう言われると、嬉しく思う反面、天使のようでなくてはならないと思い、ちょっとつらいでしょう。
お国のために命を捧げる人は英雄だ。
戦争の時に使われる言葉ですが、権力に逆らうことができない立場では、この言葉を受け入れるしかないでしょう。
この子は物分かりがいい、よくできた子だ。
こう褒められた子供は、本当の気持ちを押し殺して、いい子を演じようとします。
人を褒めるのはいいことですが、褒め言葉に何等かの期待を込めるのは、よくないことです。
相手を褒めることで、今後もその相手に、自分に都合よく動いてもらおうと考えるのは、相手を支配しようとするのと同じです。
褒めることで、支配する。
巧妙な支配ですね。
権力者は、強引に相手を支配しようとしますが、自らを正当化するために、美しい言葉や美談を使って、体裁を整えようとするものです。
今話題のオリンピックもそうでしょう。
平和の祭典だとか、四年間がんばった選手の夢だとか、きれいごとを並べますが、その実体はお金と名誉でしょう。
選手の純粋な夢を利用して、多くの権力者や資産家が、さらなる冨を手に入れようとしているだけです。
純粋にオリンピックをするのであれば、各国持ち回りなどと言わず、オリンピック発祥のギリシャで開催すればいいのです。
その方が、環境は一定に保たれますし、造られた施設にも無駄がありません。
観光以外に産業がないギリシャにとっても、経済を助ける大きな力になるはずです。
開催時間もスポンサーの都合などで決めるのではなく、選手が最も活動しやすい時間帯を選ぶべきでしょう。
本当はいけないことをしたのに、それを美談にして済ませようとするのは、権力者がよくやることです。
ブラック企業が、自らに従う従業員を賛美するのも、これと同じです。
きれいな言葉や美しい話を聞かされた時、それが純粋な思いから出ているものかを、見極める必要があります。
そういうもので、人の心を支配しようという企みが、隠されていないかを確かめなければなりません。
また、純粋な思いから出たものだとしても、その人がどの視点から、物事を見ているのかも、知っておく必要があるでしょう。
戦争の英雄は、相手側から見れば、非道な極悪人に過ぎません。
オリンピック選手の夢が強調されますが、夢があるのは、オリンピック選手だけではないのです。
看護士さんも人間ですし、いい子供も悪戯をしたい気持ちはあるのです。
美しい言葉や美談に酔って、権力者の企みに乗せられたり、涙を流している人たちのことを、忘れてはいけません。