他の生き物の世界
人間は自分がいる世界、自分が認識している世界が、唯一のものだと思いがちです。
しかし、個人が体験している世界は、人それぞれで異なりますし、人間以外の生物が経験している世界となると、全く別の世界です。
よく言われるのは、犬の目は色がわからないから、犬が見ている世界は、白黒の世界だということです。
猫は幽霊が見えるそうですので、幽霊が存在している世界の様子も、見えるのでしょう。
モンシロチョウやハチドリは、紫外線が見えるそうです。
でも、紫外線が見えない人間には、それがどのように見えるのかは、わかりません。
昆虫が持つ複眼は、小さな目がいくつも並び、ほぼ360度全部を把握できるようです。
クモは目が八つあります。
でも、人間の目とは違いますから、一つの目が見ている映像は、人間が見ているものとは、全然違うのでしょう。
もしかしたら、単なるエネルギーのような、もやもやした感じの映像かもしれませんね。
目がたくさんあると、その生き物は世界を、こんな風に見ていると考える時に、丸いモニターがいくつも並べた状態を、イメージするかもしれません。
一度にたくさんの画面を、同時に把握しているイメージですね。
でも、人間には目が二つありますが、私たちが認識している映像は一つです。
二つの目から送られた視覚情報を合成して、一つの立体映像として把握しているのです。
と言うことは、目がたくさんある生き物も、多くの映像を一度に認識するのではなく、それらが合成された特殊な視覚情報を、感じているのかもしれません。
視覚よりも、聴覚や嗅覚に重点をおいた生き物も、いるでしょう。
モグラはずっと地中にいるわけですから、視覚よりも嗅覚や聴覚が発達しているはずです。
夜、空を飛び回るコウモリは、超音波を発して、跳ね返ってくるその超音波を聞き取り、獲物や障害物を確かめています。
視覚情報もあるのでしょうが、それよりも聴覚情報の方が大きいのです。
また、私たちは聴覚を単なる音として認識していますが、他の生き物では音を、一種の映像のようにとらえているものも、いるかもしれません。
いずれにせよ、みんな、同じ所にいるのに、見ているもの、感じているものが、全然違うということです。
互いに干渉し合うことはできても、それぞれが生きている世界は、別々なのですね。
面白いと思いませんか。
それに、人間はみんな同じ世界にいるのだと思っていても、本当は一人一人が、独自の世界にいるのだと、考えやすくなるのではないでしょうか。
本当の世界というものは、あらゆる情報の塊なのでしょう。
そして、人を含めて、生き物が認識している世界は、その情報の中から選ばれたもので、構成された独自のものなのです。