鍋の中のお湯
鍋に水を入れて、火に掛けると、水の中で対流が起こります。
底で温められた水が、上に向かって移動するのです。
その分、まだ温まっていない水は、上から下に移動します。
温められて上に移動した水は、移動するうちに、周囲の水に熱を奪われるので、次第に温度は下がり、再び下へ下がることになります。
これは人の意識の状態に、よく似ています。
人は気分が落ち込んだり、高まったりを繰り返します。
とことん落ち込むと、どん底の中に何かを見つけ、それを力に急浮上します。
人によっては、そのまま水面まで上昇し、蒸気となって、水の自分とはおさらばとなりますが、多くの人は蒸気になれず、上がったはずが、いつの間にか、また下へ落ちて行くのです。
ここでいう水の状態とは、一般的な思考や価値観のことです。
人はその中で、上がったり下がったりしているのです。
蒸気になるというのは、そういう思考や価値観から抜け出し、一段高い所から、全体を眺められるようになるということです。
熱を得た水分子が、蒸気になろうとするのは、自然の摂理です。
それと同じで、人も心に熱いものを感じると、自然に視野が広がり、深い考えを持つようになるのです。
ただ、鍋の水が過熱されないと、蒸気になれる水分子は、とても限られてしまいます。
人の心も、熱くなるようなものがなければ、鍋に入れっ放しの水のように、どよんとして変化がありません。
元々水面近くにある水分子だけが、自然に蒸発できるように、人間社会においても、一部の人だけが、物事を悟ったように感じているのです。
しかし、加熱されることで、鍋の水に対流が生まれ、多くの水分子が蒸発のチャンスを手にするように、人間社会でも世界的な出来事が、人々の心を熱くすれば、多くの人が深い考えを持つようになるでしょう。
そして、それは今なのです。
新型コロナが世界中で、猛威を奮っています。
しかし、コロナ以外でも、あちらこちらで紛争や差別、貧困や飢餓などの問題が、露わになっています。
そこに自然災害も加わり、人々は嫌でも苦しみや困難に、直面させられるのです。
でも、そんな状況の中だからこそ、人々の心を熱くするものが、見つかるでしょう。
普段なら、あまり気に留めないようなことが、人の心を熱くするのです。
そして、それは人々の心の対流を起こし、やがて現状の価値観を超える思考が、次々に生まれて来るのです。
テレビやインターネットのニュースなどを見ていると、すでにそんな新たな思考や価値観が、生まれて来ているのがわかります。
それは、来たるべき新たな社会の姿を、垣間見せてくれています。
派手な記事ばかりでなく、そんな心を熱くしてくれるような記事に、目を向けてみて下さい。
きっと、あなたも知らないうちに、意識の対流に巻き込まれ、深い思考を持つようになるでしょう。