許すということ その2
さて、それでは今後、傷ついたあなたは、どうすべきなのでしょうか。
一生の間、傷ついた心を抱えながら、苦しまなければならないのでしょうか。
そんな事はありません。
あなたは、この苦しみから逃れられるのであれば、どんな事でもしたいと思うでしょう。
そして、それは可能なのです。
そのためには、あなたの価値観を、変えなければなりません。
あなたの価値観が、あなたを苦しみの中に、縛りつけているからです。
心の傷で苦しむ、あなたの価値観とは、どのようなものでしょうか。
恐らく、あなたは自分の存在を、とても小さく価値のないものと、見ているのだと思います。
自分に自信を失い、自分なんかに普通の暮らしは、訪れないだろうと、決めてかかっています。
本当だったら、今とは違う人生を、送っていたはずなのにと、悔しさで一杯です。
たった一度の人生、やり直しが利かない人生を、台無しにされてしまったと、嘆く思いと、相手を責める気持ちが、繰り返し起こります。
それらの思いが鎮まっている間は、常に虚無がつきまといます。
道端を、よく観察してみて下さい。
コンクリートの隙間に溜まった、土埃の中から、芽を出す草があるでしょう。
自分で望んで、そんな所に根を、下ろしたわけではありません。
たまたま種が落ちた場所が、そこだったのです。
それでも、草は精一杯生長しようとします。
恵まれた土地に、生える仲間のようには、大きくはなれません。
それでも、太陽に向かって精一杯伸び、小さいながらも花を咲かせます。
誰も見てくれないかも知れません。
虫も飛んで来てくれないかも知れません。
それでも草は、懸命に花を咲かせています。
人間も同じです。
どんなにひどい環境に置かれようとも、人間は人間なのです。
人として育ち、人としての喜びを、花咲かせることができるのです。
条件の悪い所でも、草花が生長し、花を咲かせることができるのは、何故でしょうか。
それが、草花の本来の姿だからです。
生長して花を咲かせるという、草花の本質にだけ、従って生きているからです。
では、あなたが人として、本来の人生を取り戻すためには、どうすればいいのでしょう。
身近に、あなたを傷つける要因があるのなら、そこから距離を置くのが一番です。
しかし、嫌なものから逃げるという、見方をしてはいけません。
スギ花粉やハウスダストなど、アレルギーを引き起こす、アレルゲンがある所から、ない所へ避難するぐらいに、考えるのです。
嫌なものから逃げる、と考えてしまうと、離れた先でも、嫌なものが頭から離れません。
つい嫌なものの事を考えてしまうと、怒りや悲しみの発作を、起こしてしまいます。
その点、アレルゲンから離れたと考えていれば、気分はかなり楽になるでしょう。
花粉症の人が、スギ花粉がない外国へ行くと、花粉症の症状は起こりません。
そんな時に、わざわざ花粉症で大変だった事を、思い出す人はいません。
思い出したところで、ただの花粉ですから、症状が出る事もないのです。
だから、嫌な相手のことも、花粉と同じだと考えるのです。
実際、愚かな人というのは、その程度のものなのです。
あなたが心の中で、相手を悪魔のように受け止めるから、離れていても苦しむのです。
でも実際の相手は、ただの愚かな人間に過ぎません。
あなたにとって、何の価値もありませんから、考えるだけ無駄な存在です。
それでも、傷ついた心が相手の事を、思い出させるという事はあると思います。
そんな時は、さらに価値観を変えましょう。
自分にとって、世界は孤独で不安に満ちていると、あなたは考えているに違いありません。
でも、それは事実なのではなく、そう思い込まされているだけなのです。