四国遍路1
四国には、八十八ヶ所のお寺を巡る、四国遍路というものがあります。
これは弘法大師(空海)が修行のために、四国の地を回った足跡を、訪ねて回るものです。
順路は徳島県の1番札所霊山寺から始まり、高知県、愛媛県と回って、最後は香川県の88番札所大窪寺で終わります。
その行程は、約1,400kmに及ぶと言います。
その間、それぞれの寺は、均等に建てられているのではありません。
道中、いくつかの寺が近くにある所もあれば、寺がなくて、ずっと長い距離を移動するだけの所もあります。
道が平坦な所もありますが、険しい山道を通ることもあります。
今では、車やバスで移動する人も、多いようです。
そういう人には道の険しさは、あまり関係ないかも知れません。
でも、歩き遍路を行う人は、かなり体力と気力が必要でしょう。
私が松山で暮らすようになったのは、今から30年ほど前のことです。
その頃には、札所のお寺や、お寺へ向かう道には、お遍路さんの姿を、よく見かけました。
お遍路さんは白装束に身を包み、菅笠をかぶって、杖を持っておられます。
遠くからでも、すぐにお遍路さんだとわかりますので、見間違えることはありません。
そのお遍路さんの中には、外国の方の姿も、よく見かけたものです。
お遍路旅は異教徒の人でも、構わないそうなんですね。
一方、外国の人の方も、それぞれ自分の宗教を持っていると思うのですが、そんなことは気にしないで、仏教の遍路旅を楽しまれている様子でした。
宗教を気にしないで巡礼ができるのは、和やかでいいですね。
お寺を回る都度、御朱印をもらえるので、コレクション感覚で、お寺巡りをされる方も、いると思います。
しかし、人生に行き詰まったり、最愛の人を失ったり、いろいろ悩みや苦しみ、悲しみを抱えて旅をされる方も、少なくないようです。
長い距離を歩き続ける方は、途中で遍路旅に出たことを、後悔することもあるそうです。
それでも頑張って歩き続けていると、道中で地域の人々のお世話になったり、様々な人と出会ったりします。
それで感激し、人間であることの喜びを、感じたりするのです。
また、一人で歩いていると、世間の忙しさや価値観から解放されて、時間やお金に追われない、素の自分を見つけることも、できると言います。
そういう経験をしながら、一つ一つお寺を回り、全部回りきることで、大きな達成感が得られるのですね。
それは、その人にとって、とても大きな人生経験となり、その後の人生に対しても、大きな影響を与えることになるようです。