現実世界2
この世界が現実だと思う理由は、次の三つです。
①五感による安定した持続的な知覚。
②記憶による確認。
③人の一生よりも、長い存在。
でも、この三つの理由があれば、本当にこの世界は現実だと、言えるのでしょうか。
①の理由ですが、リアルな夢では、この世界と同じような、しっかりした知覚があります。
映画のマトリックスで描かれていたように、リアルなバーチャル世界を体験させられると、あたかもそこが現実世界のように、認識してしまうでしょう。
つまり、現実世界の証として、知覚を挙げても、実は証にはならないのです。
体験している世界が、現実かどうかを確認するためには、本物の記憶が必要です。
本物の世界の記憶がなければ、この世界が現実なのかバーチャルなのかを、区別することはできません。
正しい記憶が、世界が現実かどうかを、判断するために必要なのです。
②の理由としても、記憶を挙げました。
しかし問題なのは、私たちが現在持っている記憶が、本当に正しい記憶なのかということなのです。
私の夢の中での経験ですが、私は夢の世界における、記憶がありました。
私は夢の中で、ある状況にいました。
それが、どんな状況だったかは、忘れてしまいました。
その夢の中の私は、その状況が起こるより、ずっと前の事を、思い出しました。
もちろんそれは、その夢の世界での記憶です。
その状況が起こった理由を、私は夢の中で、思い出したわけです。
しかし、その理由としての場面は、その夢では体験していません。
ちょっとわかりにくいですが、たとえば、車で事故を起こす夢だったとしましょう。
見ている夢は、事故の場面です。
自分は事故の場面を見ながら、事故になったのは、家を出る時に、妻と言い争いをしたからだと、その時の事を思い出すのです。
でも夢の中で、妻と言い争う場面はありません。
こんな感じです。
夢の中のことですから、脳が勝手に都合のいい記憶を、創作したのだろうと、考える人はいるでしょう。
私はその意見を、否定するつもりはありません。
でも、それはその人の考えであって、事実だと言い切れるものではないことも、理解しています。
重要なのは、この世界とは別の記憶というものが、存在したということです。
夢の中では、その記憶が本物の記憶なのです。
目覚めた後は、今の記憶が本物です。
しかし、絶対的な意味で、今の記憶が本物だと、断定することはできません。
映画のように何らかの形で、すり込まれた記憶かも知れないのです。
この世界における記憶が、本物でなかったとしても、それを証明することはできません。
それを証明するためには、本当の現実世界における記憶が、必要になります。
その本物の記憶がない限り、ひょっとして、この世界がバーチャルだったとしても、それを見破る術はありません。
次に③についてですが、実際にこの世界が、バーチャルだとすれば、どうでしょうか。
用意された記憶をすり込まれて、バーチャル世界のゲームに、参加していると考えて下さい。
ゲームですから、私たちが登場する前から、世界は存在しています。
同じ理由で、私たちが去った後も、世界は残ります。
つまり③についても、この世界が現実だという、証拠にはならないのです。
もしかしから、人類は集団でバーチャル世界を、体験しているのかも知れません。
そんな馬鹿なと思う人が、ほとんどでしょう。
しかし、そうではないと言い切れるだけの、証拠を示せる人は、いないと思います。
この世界が現実だと考える理由は、そうだと信じる、信念以外にないのです。