体の傷と心の傷 その8
幼い頃の親や先生というのは、子供にとっては誰より信頼できる人物です。
特に親は、自分に愛情を注いでくれるはずの存在ですから、子供はその言葉を100%受け入れてしまいます。
また、仲よしだった友だちや、自分が大好きな人から言われた言葉も、その子供にとっては、かなりの影響を持つものです。
こんな人たちから、悪意があるないに関係なく、否定的な言葉を投げかけられてしまうと、その言葉が棘となって、その子供の心の奥深くに突き刺さってしまいます。
言われた時に、ぐさっと傷ついたこと自体は、時とともに忘れるかもしれません。
しかし、その言葉の棘は、心の奥に刺さったままなので、その子供が成長してからも、その思考や行動に影響を与え続けます。
本人も、自分がどうしてそう考えてしまうのかが、理解できません。
そう考えてはいけないと思っても、どうしてもそのように考えてしまうのです。
たとえば、お前は無能な役立たずだと言われて育つと、大人になってからも、自分は無能で役立たずな人間だと、信じ込んでしまいます。
どうでもいい人から言われたなら、言い返すこともできるでしょうが、神さまみたいな相手から言われた言葉には、抗うことができません。
表面的には、そんなことを考えない自分を装うことはできますが、ここ一番という所では、その心の棘が邪魔をして、積極的に自分を出すことができないのです。
何か別のことで、心の傷を負った時に、その傷がなかなか癒えない場合、実はその傷の奥に、この棘があるのかもしれません。
この棘さえなければ癒えているはずの傷が、棘があるがために、なかなか癒えないのです。
この棘の存在に気がつけば、それを抜いてやればいいのですが、本人も周囲の人も、そのことに気がつかなければ、いつまで経っても傷は癒えません。
傷はどんどん悪化して、悲惨な結末を迎えることも有り得ます。
そうならないために、自分にはネガティブな思考の棘が、刺さっていないだろうかと、確かめてみる必要があります。
自分に自信がないとか、何をしても不安だ、などと思うのであれば、その考えがどこから来たのかを、調べてみるのです。
生まれたばかりの赤ん坊の時には、そんな思考はないはずです。
と言うことは、生まれてからこれまでの間の、どこかでその考えを擦り込まれているわけです。
その確認を自分でするか、周囲で気がついた人が、いろいろ話を聞きながら、確かめてみるといいでしょう。
そうすれば、必ず棘の存在がわかりますし、それがいつ刺さったかもわかると思います。