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体の傷と心の傷 その1

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体に傷ができると、体はその傷を塞ごうとします。

血液やリンパの液が固まって、傷の表面に蓋をして、外から邪魔なものが侵入しないようにします。

周辺の菌や異物が、傷の中へ入り込むと、白血球がこれを排除しようとします。

そして、周辺の組織の細胞が増殖をして、傷で生じた隙間を埋め、元の状態を再建します。

この過程が順調に進めば、傷は癒やされ、体は元気を取り戻します。

ところが、何等かの事情で、これらの過程がうまく進まないと、傷はいつまで経っても治りません。

かえって悪化して行き、もっとひどい状態になってしまいます。

たとえば、血液が固まらなければ、傷口を塞ぐことができませんから、外敵がどんどん侵入してしまいます。

いくら白血球が外敵を排除すると言っても、きりがありませんし、侵入する外敵が多ければ、白血球が抑えきれません。

それに、傷が大きくて出血が続けば、出血多量により、その人は死に至るでしょう。

血液が固まって、傷口が塞がれていても、白血球は働かなければ、中へ侵入した菌や異物を、排除できません。

菌はどんどん増殖しますから、侵入した数が少なくても、傷の中でみるみる増えて行きます。

これを抑えられなければ、やがては菌は血管から全身に広がり、敗血症の状態で、その人は死に至ります。

異物が体に毒にならなければ、それで死ぬことはありません。

しかし、異物がある部分は、周囲の組織がひっつくことはできませんから、そこに異物を抱えたまま、傷が治る形になります。

目に見えないような、小さな異物であれば、特に問題は起きないかもしれません。

でも、大きな異物であれば、それが周囲を圧迫することで、起こらなくてもいい痛みが生じたり、体の動きが制限されたりするでしょう。

逆に、白血球が異物を排除しようとして、周辺に多量の活性酸素を撒き散らすと、周辺組織の細胞までも、その被害を受けてしまいます。

たとえば、ゴキブリを退治するのに、閉めきった家の中で、バルサンをたくはずが、町全体にバルサンをたいてしまったのと同じです。

全然関係ない家までもが、バルサンの煙にやられてしまい、そこで暮らしている人々は、健康被害を受けることになります。

場合によれば、菌や異物ではなく、この白血球の過剰な攻撃によって、その人が死んでしまうこともあります。

周辺組織の細胞は、とにかく傷を埋めようとします。

細胞同士が隣接できるように、互いに離れてしまった部分の細胞が、増えて行くのです。

しかし、全ての細胞が分裂して増殖できるわけではありません。

それができるのは、体の表面ではなく、奥の方にある細胞です。

傷は中の方から、順番に盛り上がる形で、修復されます。

ですから、傷が順調に回復していたとしても、表面の傷口が塞がるのは、一番最後です。

血液が固まったかさぶたは、その時まで傷口を護る、大切な役割を持っています。

細胞が増殖するためには、その分の養分が必要となります。

栄養状態が悪ければ、細胞が増殖したくても、増殖できるだけの成分が足らず、増殖することができません。

そうなると、傷はいつまで経っても治らないのです。

また、外敵と戦う白血球も、細胞の一種ですから、栄養状態が悪ければ、この白血球も増殖するのに、影響が出て来ます。

栄養状態が悪ければ、免疫機能も落ちてしまうわけです。

今の日本では、そこまで栄養状態が悪い環境はありませんが、それでも個人的には、無理なダイエットをしていたり、偏った食事をする人がいます。

ちゃんと食べているつもりでも、細胞が要求している成分が、取り込まれていなければ、栄養状態は悪くなってしまいます。

あまりに傷が大きくなると、そこを埋めるだけの、組織細胞の増殖が追いつかず、細胞は自身が埋めることができない隙間を、にかわのような物質で埋めようとします。

そうやって、何とか傷を直すのですが、傷口はきれいに元の状態には戻っておらず、見た目にはっきりした、大きな傷跡として残ります。

傷が塞がっているので、一応は傷は癒えた形ではあります。

本人が気にしなければ構わないのですが、その傷跡を見るたびに、嫌な思いがしたり、その傷跡がその人の自信を失くすこともあります。

病院で傷を修復する時、傷口がぴったりと塞がるように、傷の端同士を寄せ合って、テープで留めたり、糸で縫い合わせたりします。

傷が深ければ、中に空洞ができないように、中の方も糸で縫合して、組織細胞同士がひっつき合うようにしてやります。

そうして適切に処置をしてやると、傷はきれいに修復します。

しかし、縫合がへたな医師に傷をゆだねると、明らかに目立つ傷跡が残ります。

傷を縫合してもらうのに、どの医師にしてもらうかは、とても大切なことです。

このように、傷が順調に塞がれば、その後の生活に、その傷が支障を来すことはありません。

しかし、ずっと傷が癒やされず、治ったと見えても、本当には治っていなければ、その傷はその後も、その人の暮らしに悪い影響を与え続けます。

私たちは怪我をすることはあっても、その傷がどのように治って行くのかということには、あまり意識を向けません。

でも、それを知っておくということは重要です。

実際に傷を負った時に、その知識は大いに役に立つでしょう。

そして、それは体の傷だけでなく、心の傷についても言えることなのです。