何に意識を向けるのか その1
目の前に机があります。
その机の上には、いろんな物がごちゃごちゃと置かれてあります。
読みかけの本や新聞、鉛筆に消しゴム、ボールペン、メモ用紙、預金通帳、広告のチラシ、スマートフォン、家族の写真、ノートパソコン、眼鏡、飲みかけのコーヒー、ビスケット。
さて、机の前に座ったあなたは、どこに目を向けるでしょうか。
読みかけだった本に手を伸ばすでしょうか。
まずは、コーヒーを口にしますか。
あるいは先にビスケットかも。
ふと何かを思いつき、メモ用紙にそれを書き込むかもしれませんね。
その時に、鉛筆を選ぶかボールペンを選ぶか。
どちらが近くにあるのか、どちらが普段のお気に入りなのか、それで選ぶ方が決まるでしょうか。
でも、ボールペンを選んだら、インクが切れているかもしれません。
鉛筆を選んだら、書こうとした時に、芯がポキリと折れることもあるでしょう。
そんなことより、今はまだ給料日が来ないのに、金欠で困っていたなら、真っ先に預金通帳を確かめますよね。
暮らしに孤独を感じていれば、一番先に手に取るのは、家族の写真かもしれません。
何にも考えずに過ごしていると、いつもと同じようにパソコンを開くか、スマホを見るか。
買い物に行くつもりでしたら、広告のチラシを見ているでしょうか。
そこで字が見えづらくて、眼鏡を外していたことを、思い出したりするかも。
机に置かれた物のどれに目を向けるのかは、人によって違います。
また同じ人であっても、その時の状況によって違うでしょう。
もしかしたら、どれにも目を向けずに、ただ全体をぼんやり眺めているだけかもしれません。
あるいは、置かれた物ではなく、物が置かれている机に注目することもあると思います。
机にある小さな傷やへこみを見て、それがどうしてできたのかということに、思いを馳せるのです。
どうしてできたのかという点では、机そのものが、どこで誰がどうやって作ったのかと、考えるかもしれません。
それと同じ目を、机の上に置かれた物に向けて、一つ一つの物が、そこに置かれるようになった経緯を、思い浮かべるようになったとします。
これは誰が作ったものなのか。
どうやって手に入れたんだっけ?
ああ、これは誕生日のプレゼントにもらったものだった。
こんな感じで、その品物に込められた想いや、その品物に隠されたドラマなどが思い浮かぶと、同じ物がそれまでとはまた違ったように、見えて来るでしょう。
何かに注目していると、他の物も視野に入っているはずなのに、注目している物以外は見えなくなってしまいます。
見えたとしても、意識には残りません。
それは見ていないのと同じです。
また、同じ物を見続けていても、どんな考えで見るかによって、その物から得られる情報は、違って来ますし、限られてしまいます。
それをちゃんと見ているつもりでも、実は全然見ていなかったということにもなりかねません。
こうしたことは人生にも言えることなのです。