世界と塗り絵 その1
今のあなたにとって、世界は素敵なものでしょうか。
それとも、不安や苦痛に満ちたものでしょうか。
何の刺激もない、つまらないものですか。
それとは逆に、とても刺激的で興奮するようなものですか。
同じ遊園地で同じように遊んでも、それを楽しいと思う人もいれば、つまらないと思う人もいます。
ジェットコースターやお化け屋敷を、怖くてもう嫌だと思う人もいれば、スリルがあって面白かったと思う人もいます。
本を読めば、場面や情景が頭に浮かぶという人もいれば、文字ばかりでさっぱりわからないという人もいます。
流行りの場所で、流行りのスイーツを食べて、流行りのポーズを決めて写真を撮るのが、楽しみだという人もいます。
人と同じことをするのが嫌で、一人で好きなようにしているのがいいという人もいます。
同じ場所、同じ状況に置かれても、そこをどう感じるのは人それぞれです。
同じ所にいて、同じ物を見聞きして、同じ体験をしているのだから、みんな全員が同じ世界にいると、私たちは勝手に思っています。
でも、実際は一人一人が体験している世界は違います。
みんなが同じ場所や同じ経験をするというのは、自分に与えられたゲームの基本的な部分が、共通しているというだけです。
同じ基本となる条件を与えられた時に、そこにどのような世界を構築していくのかは、人それぞれに委ねられています。
極端な話をすれば、同じ所にいても、目を閉じている人には、何も見えません。
耳をふさいでいる人は、何も聞こえません。
見ているようでも、ぼーっとしている人は、見えているはずの物を見逃すでしょう。
聞こえているようでも、他のことに集中していると、聞こえているはずの音や声が聞こえなくなります。
果たして他の人が、本当に自分と同じものを、見たり聞いたりしているのかというと、それはわからないのです。
恐らく同じものを見聞きしているだろうと、勝手に推測しているだけです。
同じ場所を同じように見ていたとしても、立ち位置が違えば、目に映る光景は異なります。
それだけでも、同じ世界を同じように経験しているとは言えません。
さらには、その世界、その体験を素晴らしいと思うのか、つまらないと思うのか、あるいは心地よく感じるのか、不安や怒りや悲しみを感じるのかなどが違うと、それぞれが認識している世界は、全くの別物だとわかるでしょう。
これは手渡された塗り絵の用紙に、それぞれがどんな色を、どんな感じに塗るのかというのと同じです。
塗られた色の違いや、色の塗り方の違いなどで、元は同じ絵だったのに、完成品は全部違うものになります。
一人一人が感じている世界とは、そんな塗り絵のようなものなのです。