プリズム その1
プリズムに光を当てると、光が分散されてきれいな虹色が見えますよね。
元々は色がない、あるいは色があるとすれば白っぽい光が、分散されると、多くの色に分かれます。
本来の色からすれば、その中に、こんなに多くの色の光が、隠されていたのかと思うと驚きです。
しかし、それが現実であり、一つのものの中に、実は多くのものが隠されているのです。
受精卵も同じですね。
初めの受精卵は、単なる一つの細胞にしか見えません。
でも、そこには一つの体を構成する、多くの種類の細胞の姿が潜んでいるのです。
それには細胞の核にある遺伝子が関係しています。
遺伝子は染色体という塊になって存在しています。
ここには細胞の形態や機能、また細胞全体で構成する個体の形などの情報が、コンパクトに詰め込まれています。
各細胞は自らの核にあるこの遺伝子情報の、必要な所だけを展開して利用しています。
元々は同じ受精卵の分身である細胞なのに、利用する遺伝子情報の違いによって、様々な細胞へと分化して行くのです。
光にしても遺伝子にしても、見た目だけではわからない情報が、そこに詰め込まれているのです。
私たちの意識も同じです。
たとえば、突然目の前にライオンが現れたとしましょう。
当然、驚きますよね。
また、恐怖を感じます。
それから、逃げることを考えるでしょう。
これらは頭の中に、一つの塊となってあるはずです。
その想いを言葉によって解説すると、驚き、恐怖、逃避思考という風に、ばらばらに展開できますが、実際にはこれらは一つに混じり合っています。
誰かに何かを伝えようとする時、私たちは言語を用います。
そのため、頭の中で一塊になっている想いを、言語に変換して、順番に並べて表現するわけです。
これは光がプリズムで分散されるのに、似ているとは思いませんか。
そう、私たちの脳は意識に対する、プリズムの役割を果たしているのです。