持てる物は限られる その1
人は物を欲しがりますし、いろんな物を手元に置いておきたがります。
物がたくさんあることが、豊かな暮らしだと信じ込み、自分が手にする物が少ない人は、多くを手にしている人を、羨ましがります。
もちろん、そうではない人もいますが、物を欲しがる人の方が多いでしょう。
物欲に振り回されてしまうと、たくさん物を持っているにもかかわらず、もっと欲しいもっと欲しいと思うのです。
でも、いろんな物を持ったところで、それを実際に活用するのかというと、そうでもありません。
持つだけで満足してしまい、手に入れた物は使われることなく、どこかに放置されたままでしょう。
自分が何をするかによって、必要な物は違ってきますから、たくさんの物を使いこなしている人もいるでしょう。
しかし、大半の人は使いこなしているとは、言えないのではないでしょうか。
たくさん物を集めたところで、火事や地震、洪水などの災害に遭って、急いでその場から逃げないといけない時、それらの物を持ち出せるでしょうか。
まずは自分の命が大事ですし、家族や知人、仲間のことを助けようとするでしょう。
何かを持って逃げるということは、なかなかできることではありません。
本当に大変な時には、そんなことなど頭に浮かばないでしょう。
それでも、普段からいざとなった時の事を考えている人は、通帳や財布、印鑑などをひとまとめにしておいて、それをつかんで逃げるかもしれません。
でも、幼い子供がいたならば、その子たちを抱いて逃げるでしょう。
人間には手が二つしかありません。
いくらいろんな物を持とうとしても、多くは持てないのです。
何が自分にとって、本当に大切なのか。
何が自分にとって、意味があるものなのか。
そんなことは平和で安定した状況の中では、あまり考えることはありません。
自動運転の車に乗っているように、何となく過ごしていると、自分がどこの目的地へ向かっているのかすら、考えなくなってしまいます。
災害などの大きな出来事が起きた時に、はっと目が覚めたように気づかされるわけですが、できれば、そうなる前に気づきたいものです。