本当の仕事 その3
家業を継ぐ人もいれば、継ぐべき家業がない人もいます。
家業がある人を羨む人もいますが、家業に縛られない人たちを羨む人もいます。
家業があるのが、いいとか悪いとかいう話ではありません。
誰かを羨ましいと思う時、それは今の自分のあり方に、不満を抱えているのです。
家業を継いでいる人も、継いでいない人も、あるいは継ぐべき家業がない人も、今の自分に満足していれば、決して他の人を羨むことはありません。
ただ、今の自分に満足しているという理由を考えると、そこにはいろいろな価値観があることがわかるでしょう。
お金を稼ぐことが何より大切だと考えている場合、お金を稼げるかどうかで、仕事の善し悪しを決めます。
そんな人にとっては、お金を稼げる仕事はいい仕事で、稼げない仕事はいい仕事ではありません。
自分が今の仕事でお金を稼げている間は、その仕事はいい仕事なのですが、お金を稼げなくなると、途端にそれはいい仕事ではなくなります。
それが仕事の内容に原因があるならば、仕事が悪いとなるでしょうが、自分の能力が原因となった場合、自分はもうお金を稼げなくなったから、人生はおしまいだと思うでしょう。
売り上げの成績を伸ばして、周囲から注目を浴びることで、大きな満足を得ている人は、注目がなくなることを恐れます。
恐れが潜んでいる満足は、本当の満足とは言えません。
お金と同じで、注目が得られなくなると、途端にその仕事が嫌になるでしょう。
自分に原因があって注目が得られないと考えると、自信を失って何もできなくなるかもしれません。
お金にしても注目にしても、それがなくなればおしまいだと考えると、それを失うまいと必死になります。
体を壊そうが心に不調を来そうが、お構いなしにお金や注目を得ようとします。
それでもなかなか上手く行かない時には、やってはいけないことまでやって、目的を達成しようとします。
こうなると病気と言えるでしょう。
そして、こんな考え方は間違っていると、離れて見ている人にはすぐにわかります。
一方、その仕事や作業そのものに面白さを感じたり、魅了されている人は、それができることにこそ満足感を感じます。
他の人が気にしないようなことにも、こだわりを出し、決して自分がしていることが、完成しているとは思いません。
どんなにいい物を作ったり、どんなにいい仕事をしたとしても、明日は新たにいい物やいい仕事に、取り組もうとするのです。
いい仕事をしていると、それは自ずと人々の知るところとなり、無理に売り込もうとしなくても、勝手に広まって行きます。
特に、今の情報時代ではそうです。
一人が発した情報が、あっと言う間に世界中を駆け巡ります。
少し前なら、商品を開発しても、それを宣伝するために、多くの費用や労力が必要とされました。
しかし、今はそんなことをしなくても、見ている人たちが、無料で好意を込めて、情報を広めてくれるのです。
そのため、個人でいろんな仕事をする人が増えました。
個人でするから、大量生産のような画一的なことはしません。
手作りとこだわりを前面に出し、自分の個性を表現しています。
それは多くの人に支持されていますし、刺激を受けて、自分もやってみようと考える人も増えています。
与えられた物を受け取るばかりだった人々が、自分で何かを作って発信する時代になったわけですね。
そんな時代に入ったということを念頭に、今の自分に不満がある人は、本当は何に不満を感じているのか、心の中をよくのぞいてみて下さい。
お金や注目を望んでいると思っていたはずなのに、本当に自分が求めているものは、そんなことではないと気がつくかもしれません。
そして、気がついたならば、そのとおりに動いてみてください。
きっと、そこには本当に満足できる仕事が、待っていると思います。