本当の仕事 その1
世の中にはいろんな仕事があります。
仕事と家庭の両立という言葉があるように、仕事と家のことは別という考えがありますが、家事もまた仕事です。
そもそも仕事とは何でしょうか。
辞書で調べてみると、次のように書いてありました。
① すること。したこと。しなくてはならないこと。しわざ。また、からだを動かして働くこと。作業。
② それによって生計をたててゆくための職。職業。業務。
③ 事をかまえて、ふつうでない行動をおこすこと。また、悪事を働いたりたくらんだりすること。
④ 針仕事。裁縫。
⑤力学で、ある物体に力を作用させその位置を移動させること。
このうち、④は昔の暮らしの中の表現です。
今の時代に、仕事と言われて、針仕事かと思う人はいないでしょう。
⑤は物理学での表現です。
また③は悪人たちが使う言葉であり、彼らの立場に立った時の「仕事」です。
一般的に仕事と言えば①と②ですが、どちらの順位が上かと言えば、②でしょうね。
家事は①の意味での仕事になりますが、お金を稼ぐ仕事は②の意味です。
そして、お金につながらない家事よりも、お金を稼ぐ仕事の方が、上に見られるのが今の風潮ですから、①より②が上ということですね。
でも、これは正しいのでしょうか。
①の仕事よりも②の仕事の方が、上に見られるというのは、今の風潮であり、絶対的なことではありません。
あくまでも、現在世界を牛耳っている経済中心の社会の中においてのみ、通用している考え方です。
もし、お金が通用しない状況や、お金に何の意味もない状態に置かれたとしたら、この順位はどうなるでしょうか。
当然①の仕事の方が上ですし、そもそも②の仕事は、仕事として見なされないかもしれません。
そうは言っても、今は何を手に入れるにしても、何をするにしても、お金が必要なシステムが構築されています。
お金を稼ぐことが第一に考えられますし、より多くのお金を得られる仕事が、いい仕事だとみなされています。
そのために嫌な仕事であっても、お金のためだから仕方がないという、あきらめの気持ちになりますし、嫌な仕事を終えたあとで、お金を手に入れると、我慢した甲斐があったと、自分を慰めます。
お金がないと暮らせないし、やりたいことができないけれど、今の自分には、そのお金を手に入れる環境がない。
となれば、悪いことをしてでも、お金を手に入れようと考える人が、現れるのは当然のことでしょう。
そして辞書の③の意味のように、その人たちにとっては、悪事が仕事となるわけです。
他人から見れば、そんなの仕事じゃないと思えますが、彼らにとっては、立派な仕事ということです。
お金が目的に悪事をする人は、言い換えれば、お金があるのであれば、悪いとわかっていることなど、わざわざやらないということです。
つまり、一番の問題は、お金がないと身動きが取れないシステムにしておきながら、誰でもがお金を手にする機会が与えられていない、ということです。
そもそも、お金が登場する前から、人は生活をしていたはずです。
その時の仕事と言えば、①の意味の仕事しかなかったでしょう。
本来の仕事というのは、①の仕事だけなのです。