犯罪が伝えていること その1
サイバー攻撃による身代金請求の話や、盗んだ個人情報により、本人に成りすました購買の話が、テレビで報道されていました。
素人にはわからない、コンピューターの知識や技術を悪用し、一般の人とは異なる次元で起こっているような、途轍(とてつ)もない犯罪が、毎日のように行われています。
それを防ぐためには、個人的な注意も必要ですが、何かの登録先で情報を抜き取られてしまっては、個人では防ぎようがありません。
個人情報を扱う所は、セキュリティ対策を行わなければなりませんが、どんなセキュリティ技術も、それを上回るプログラム技術があれば、いとも簡単に避けることができます。
よく言われるように、イタチごっこで終わりというものがありません。
番組では視聴者に対して注意喚起を行っていましたが、注意喚起だけで解決する問題ではないのです。
サイバー攻撃だけでなく、通常の犯罪も、あとを絶ちません。
暴行や殺人、横領や泥棒など、他人を傷つけたり、他人の権利を奪うような話は、しょっちゅう耳にすることです。
法律上の犯罪とみなすかどうかは、地域性や程度の問題というものがあるでしょうが、差別やいじめ、虐待なども、他人を傷つけ、権利を奪うものです。
また広い意味では、苦しんでいる人がいて、それがわかっているのに、見て見ぬふりをするというのも、同じことでしょう。
何かしてあげたいけれど、どうすることもできないと、残念に思うことと、自分には全く関係のないことだと、無視するのとは違います。
残念に思いながら何もできない人は、目の前に行動を示す機会が訪れたら、必ず動きを見せます。
無視している人は、そんな機会が訪れても、見向きもしないでしょう。
犯罪という言葉は、人間が定義したものです。
この言葉を使って、やってはいけない行為や、あってはならない状況を説明しているわけですが、物事は簡単に線引きできるものではありません。
それを無理やり線引きして、犯罪か犯罪でないかを区別してしまうと、犯罪でないと定義された部分の、実は人々を傷つけるような事柄が、正当化されてしまいます。
悪意を持っている人は、そんな線引きの曖昧さを利用して、本当はしてはいけないことをしているのに、それが犯罪だと咎められない状況を、巧妙に作り出します。
悪いことをしているのは明らかなのに、それを取り締まる法律がないから、どうすることもできないという、間が抜けた話もよく聞きますよね。
普通は誰もやらないようなことなので、あえて法律という形を作らないだけなのに、そこを逆手に取って、法律に書いていないからと、大手を振って悪いことをする者がいるのです。
ありとあらゆる行為を、法律で取り締まろうとすると、その量は膨大なものとなり、専門家でさえも、その全てを頭に入れることは、難しくなるでしょう。
では、どうすれば犯罪を取り締まることが、できるのでしょうか。
まず、この犯罪を取り締まるとい考え方を、変えなければなりません。
犯罪は取り締まるのではなく、人が犯罪を起こさないようにすることが肝要です。
それは病気を治療するのではなく、病気にならないようにする、というのと同じです。
病気にならないためには、どうするのか。
病気になる理由を突き詰めて行き、そうならないようにするのです。
それは日常の暮らし方や、ものの考え方を、どうするかということです。
犯罪もこれと同じで、その人がどうしてそんな犯罪を、起こしてしまったのかという理由を、とことん調べて、その状況を改善しなければなりません。
そのためには、どんな犯罪も、個人的なものとはとらえずに、社会全体の問題として見る必要があるのです。