日本初のオストメイトモデル その1
病気や大怪我が理由で、直腸や直腸を含む他の大腸を切除された方は、腹壁に穴を開け、そこへ残った腸の断端部を縫合した、人工肛門(ストーマ)を作られます。
日本では、この人工肛門の方が約21万人いるそうで、その方たちはオストメイトと呼ばれています。
オストメイトの方たちは、人工肛門を作ることで、元の病気や大怪我の状態から抜け出せます。
しかし、その代わりに人工肛門による不便さや、苦労を強いられることになります。
本来の肛門は便意を感じたり、排泄を調節することができますが、人工肛門の場合はそれができません。
そこに袋を装着して、だらだら出て来る排泄物やガスを貯めて、一杯になったら新しい袋と交換します。
袋は本人が眠っていても、勝手に貯まって行くので、一杯になったのに気がつかないでいると、最後には弾けて破れ、辺りは排泄物まみれになります。
病気や怪我の苦しみを乗り越えるためとは言え、人工肛門による代償は大きく、見た目の問題や、袋の管理の問題、世の中の偏見など、多くの新たな問題を、患者の方たちは抱えることになるのです。
袋を衣服で隠してしまえば、外見上は他の人たちと変わりませんから、周囲の人はその方の状態を、言われなければ知ることができません。
また、知ることがないがために、そういう方たちの苦悩を理解できず、時には偏見の目を投げかけることにもなるのです。
大抵の場合、人工肛門になった方が自宅へ戻ると、自分と同じ境遇の人は、身の回りにはいません。
独りぼっちです。
家族がいても、人工肛門でなければ、本当の気持ちはわかってもらえません。
自分がどれだけつらく苦しく悲しいのか、この状況をどう乗り切ればいいのか、答えを教えてくれる人はおらず、一人で悶々と悩み続けるのです。
袋は透明で、中の排泄物が丸見え状態です。
万が一、装着がきっちりしていなければ、衣服は汚れるし、辺りに嫌な臭いが広がります。
ちょっと変な匂いがすると、自分ではないかと不安になるのです。
それまで着ていた水着はもちろん、体にフィットするような服も、袋を隠せないので着られません。
装着部の皮膚が、炎症を起こしてただれることもあります。
だからと言って、袋の装着をやめるわけにも行かず、装着部を清潔に保つよう、気を遣います。
そうなるまで当たり前に思っていた楽しみの多くが、突然奪われてしまい、人生に絶望してしまいます。
中には、自殺を考える人もいると言います。
そんなオストメイトの方たちの苦しみを、世の中に伝える一方で、オストメイトの方たちを、励ましている人がいます。
それは内科医師のエマ・大辻・ピックルスさん(42)です。