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迷走する中国

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 ※Chris FungさんによるPixabayからの画像です。

6月30日に中国の全人代常務委員会で、香港国家安全維持法案が全会一致で可決しました。

その法案は翌日の7月1日、つまり昨日から施行され、早速一人が逮捕されました。

と思ったら、あれよあれよと言う間に、180以上が逮捕されたという事です。

日本で何かの法案が成立しても、その施行まで猶予期間があるのが、普通です。

法案を成立させても、その周知を徹底させるための、準備期間が必要なのです。

成立の翌日から、新しい法律が施行されるのは、極めて異例な事でしょう。

それほど緊急性かつ重大性のある、法案という事だと思います。

つまり、中国は今すぐ香港の、自由を要求するデモを、押さえ込む必要に、迫られていたと言えるでしょう。


香港では、近く選挙が行われ、民主化支持の議員が、多数当選することが、予測されます。

それを阻止するためにも、選挙前の今、反政府的な人々を、捕まえたかったのだろうと、考える人がいます。

確かに、それはあるだろうと思います。
でも、それだけではないと、私は考えています。

 ※Lazaro Moreti Lopes de Barros Moreti BarrosさんによるPixabayからの画像です。

香港国家安全維持法案の施行は、日本を含めた西側諸国に、中国に対する強い不信感を、植え付けました。

これは中国にとって、損以外の何物でもありません。

今後も西側諸国との間で、これまでのような関係を維持できると、中国は考えているのでしょうか。
もしそうならば、それは大いなる見誤りです。

西側諸国は、中国を警戒しています。
中国が何かを提案しても、慎重な態度を見せるでしょう。

貿易関係においても、中国を利するような取引は、敬遠されると思います。

しかし、きっと中国は、そんな事は百も承知なのでしょう。
その上で、香港を鎮圧する必要があったのです。

それは何故でしょうか。

恐らく、中国国内で政府に対する不満が、広がっているのだと思います。

中国の経済活動は、以前のような活気がなく、停滞気味だと言われていました。

そこへコロナ騒ぎが起きて、多くの国民が恐怖におののき、不自由を強いられました。

失業者も多く出て、生活の不満は、急増しているでしょう。

経済活動を再開させても、世界の国々が不安定な状態なので、経済が上向きになる事はありません。

先日、北京でコロナのクラスターが出た途端、人々は外に出なくなったと言います。

商売を再開した多くの店や街から、一斉に人の姿が消えました。

こんな事を繰り返していたのでは、経済の復活など望めません。

このような状況の中で、生活の不安が膨れ上がって爆発する事を、中国政府は心配しているのでしょう。

みんなが我慢している間は、大丈夫かも知れません。

しかし、どこか一ヶ所で大きな暴動が起きれば、それが引き金になって、国中で暴動が起きるに違いありません。

 ※NHKのWebニュースより

香港市民は、公然と政府を批判していました。

その動きには、すさまじいものがありました。

その姿が中国本土の人々を刺激する事を、中国政府は最も恐れているのだと思います。

だから、世界中から非難される事がわかっていても、香港を制圧するしかなかったのでしょう。

しかし、結果的には香港市民を弾圧した事で、中国政府はさらなる苦境に陥ります。

世界を相手にした経済活動が、これまで以上に落ち込むからです。

今の中国に、経済の命綱を握らせたいと思う国は、一つもないと思います。

今後は中国以外の国との取引に、シフトしていくはずです。

私は人類が、転換期を迎えているのだと考えています。

アメリカのような個人主義ではなく、中国のような全体主義でもない、新しい価値観が世界中に、広がりつつあるように感じています。

その中でコロナウィルスは、この価値観を広めるための、一定の役割を担っているように思えるのです。

 ※Miroslava ChrienovaさんによるPixabayからの画像です。

もちろん、コロナウィルスがそんな事を、考えているわけではありません。

ただ、コロナウィルスの脅威を、乗り越えるためには、新しい価値観が必要なのです。

コロナウィルスがなくても、いずれこの価値観は、広がって行くと思います。

それをコロナウィルスが、後押しをする形になっているのです。

その価値観とは、どのようなものでしょう。

それは他の人への、感謝や思いやりの気持ちを、大切にするというものです。

そうする事で、人としての喜びと心の安定が、得られるという価値観です。

日本もあまり他の国の事は、言えません。
それでも今の中国には、自国民を思いやる姿勢が、見られません。

全ては共産党指導部の、面子のためのように見えます。
国民のために、動いているように見えても、実際は共産党指導部を、守るためなのでしょう。

人々の不満に耳を傾け、相手の立場に立って、問題の解決法を、とことん探るべきなのです。

しかし中国政府は、不満を力で抑え込み、何も問題がないかのように、振る舞います。

病気で言えば、何か症状が出るたびに、その症状を抑える対症療法の薬を、投与するようなものです。

患者は、飲み薬ばかりが増えますが、根本的な治療は、施されません。

そのような状態が続くと、最終的には症状が、抑えきれないほどひどくなり、患者は死んでしまいます。

それと同じで、今の中国のやり方では、一時は不満を封じ込めても、いつかは積もり積もった不満が、大爆発を起こすと思います。

今後もコロナウィルスは、中国で新たな猛威を振るうでしょう。
もちろん、それは日本や他の国々でも同じです。

その時に、政府がどのような施策を見せるか、それに対して、国民がどのような反応を見せるのか、そこが問われるでしょう。

日本もどうなるかはわかりません。

しかし、少なくとも香港市民への、中国政府の仕打ちには、思いやりの欠片も見られません。

あのような政府の傲慢さを、むき出しにしたような動きをしている限り、コロナウィルスの真の脅威から、逃れる事はできないと思います。

 ※Natalia OvcharenkoさんによるPixabayからの画像です。

今、人類は国境を越えた、存在になろうとしているのです。

民族や文化の違いを、多様性として認め合い、同じ方向を向こうとしています。

それは、互いへの感謝と思いやりの心によって、導かれる方向です。

そこには、他人を傷つけるようなものはありません。

今の中国政府が、目指している世界ではないのです。

中国は何千年も前から、アジア一帯で崇拝されて来た国です。

日本の文化は、ほとんどが中国から、伝わって来たものだと言っても、過言ではないでしょう。

その栄光は、力で得られるものでは、ありません。
人々の尊敬を集めて、初めて得られるのです。

今の中国の行いは、世界の国々の尊敬を、集められるものではありません。
その真逆です。

しかし、それは中国国民の望むところではないと思います。

中国には尊敬されるべき人々が、たくさんいるでしょう。

そういう人たちが中心となった中国に、世界の尊敬を集められる、本当のリーダー国になって欲しいと、心から願うところです。