> 愛媛・四国の話 > 松山 > 伊予の狸話 その1

伊予の狸話 その1

この記事は3で読めます。

四国には狐が見られず、一方で狸はよく見かけます。

そのため、四国には狸にまつわる話が多いです。

今日は、その中の一つ、松山のお袖ダヌキをご紹介します。

松山市の街の中心部には、松山城のお堀があります。

そのお堀の東側と南側の角の部分に、大きな榎が生えていて、その根元には狸を祀った祠があります。

ここに祀られている狸が、お袖ダヌキです。

その場所は、松山市役所の目の前で、路面電車や多くの車が往来する騒々しい所です。

そんな所にひっそりと、ほとんどの人に気づかれないまま、お袖ダヌキの祠はあるのです。

 ※右が松山市役所。道路を挟んだ所に、ひっそりあるのがお袖ダヌキの祠。
 ※松山市役所から望むお袖ダヌキの祠。大きな樹木は榎。
 ※近くから見るお袖ダヌキの祠。

さて、このお袖ダヌキですが、江戸時代にお城がそびえる山から、この場所に移住して来たそうです。

昔、この辺りは榎が多く茂っていたそうで、今の市役所前の通りは榎町通りと呼ばれていました。

榎を住処をしたお袖ダヌキは、榎の上から通行人を眺めるのが、楽しみだったと言います。

また、道祖神に成りすまして、神通力で人々の願いを叶えたことから、多くの人に崇拝されるようになったとか。

このお袖ダヌキが棲む大榎は、これまでに何度か切られたり、植え替えられたりして、今の榎は明治の初めから数えて、四代目の榎だそうです。

住処である榎を切られるたびに、お袖ダヌキは他の地へ引っ越しをし、またいつの間にか元の所へ戻って来るということを、繰り返していたようです。

 ※八股というのは、ここの榎の大木のことで、八股榎と呼ばれています。

とても目立つ場所にありながら、案外知る人が少ない、お袖ダヌキ。

松山の隠れた観光スポットと言えるでしょう。

でも、これは人間の才能にも、似ていますよね。

すごい才能があるのに、本人も含めて周囲の人が気がつかない。

しかし、知っている人は知っている、ですね。

見る人が見れば、その才能がどれだけすごいのかは、一目瞭然です。

きっと、あなたにもお袖ダヌキのような、隠れた才能がありますよ。