不屈の池江選手
女子水泳の池江璃花子選手のことは、みなさんご存知でしょう。
これまで個人競技で11種の日本記録を持ち、国際大会でも多くのメダルを獲得している、日本女子水泳界最強の選手です。
東京オリンピックでの活躍が期待され、また本人もそれが夢だったでしょう。
しかし、2019年に白血病を発症し、治療に専念するため、全ての競技を中止。
夢の東京オリンピックも、断念せざるを得ませんでした。
どれほどの無念だったか、推察することはできても、実際のところは、本人でなければわかりません。
とにかく表現できないほど、つらく悲しいことだったに違いありません。
また、白血病の治療自体も簡単なものではなく、つらい日々が続いたはずです。
そんな中、池江選手は不死鳥のように蘇り、再び水泳界に戻って来るや否や、日本選手権で4冠を達成しました。
万全の体調ではなかったでしょうが、今の自分にできる精一杯の力を振り絞り、獲得した4冠です。
1年延期になった東京オリンピックですが、新型コロナの影響で、今年も開催が危ぶまれています。
国民の半数は、今の状態でオリンピックを開催することを懸念しています。
しかし、池江選手の姿を見ていると、彼女のためにオリンピックを開催してあげたい、と考える人は少なくないでしょう。
それだけ、彼女のどん底からの復活は、人々に大きな感銘を与えたのです。
実際にオリンピックがどうなるのかは、現時点では誰にもわかりません。
でも、オリンピックに出られるかどうかではなく、池江選手の生き様そのものが、何より意味のある、素晴らしい贈り物だと思います。
彼女は自らの苦しみを通じて、世界中の人々にエールを送ってくれたのです。
自分は特別ではない、みんな同じなのだと、人生を通して伝えてくれているのです。
病気に限らず、人生のどん底にいると感じている人は、数多くいることでしょう。
しかし、決してあきらめることなく、強い意志を抱いていれば、必ず上に昇って行くことが、できるのです。
努力は必ず報われるという言葉を、競技での勝利や、記録と結びつけて考える人は、少なくありません。
でも、どん底からはい上がるというのは、そういう意味ではないのです。
競技での勝利や、記録を出すことは、一つの結果に過ぎません。
どんなに世界一の記録を出したところで、本人が生きる喜びを実感できていなければ、仕方がないのです。
競技に出るたびに優勝し、毎回記録を更新できたとしたら、本人はそれが当たり前だと思い、そこに喜びを感じられなくなるでしょう。
当然のことができなければ、どうしようと、強いストレスを抱えるに違いありません。
そうなると、何のためにやっているのか、わからなくなります。
見ている方も、優勝や記録の更新を、当然のごとく期待しますので、それができなければ落胆し、中には選手を非難する者も、出て来ると思います。
それによって、本来は称賛されるはずの選手が、深く傷つけられるのです。
そんなのは全く馬鹿げたことです。
努力すれば必ず報われるというのは、どんなにネガティブな人生でも、必ずポジティブな人生に、変えることができるという意味です。
苦しみや悲しみの人生も、喜びの人生に変えられるのです。
言葉で言うのは簡単ですが、実際にするのは、なかなか大変なことです。
ですから、がんばってはみたものの、途中であきらめてしまう人も、少なくないでしょう。
しかし、そうではないのだと、池江選手は自らの体験を通して、語ってくれています。
せっかくのやる気を、失いそうになっていた人たちも、彼女の姿を見て、再びやる気を出せるようになるでしょう。
今の池江選手は、どんな金メダルよりも、美しく輝いていると思います。