国境を越えて
新大久保駅で、線路に落ちた人を助けようとして、列車に引かれて亡くなった韓国人留学生、李秀賢さんと遺族についての、ドキュメンタリー番組を見ました。
李秀賢さんは日韓の架け橋になりたいと、生前家族に打ち明けていたと言います。
その当時、ご両親は日本について、あまりいい印象を持っておられなかったようです。
しかし、多くの見知らぬ日本人が、息子の死を悼んでくれたことに、ご両親は驚いたそうです。
そして、息子の意志を継ぐことを、決意されました。
お二人は李秀賢さんが通っていた、日本人学校の先生たちと協力し、日本に留学する韓国人のための、奨学金の基金を立ち上げました。
その基金は、毎年多くの留学生を日本へ送り出しています。
今では、その数は1000人を超えたそうです。
それだけでなく、お二人はあちこちの学校で、日本と韓国が手をつなぐことの大切さを、子供たちに教えて来られました。
しかし、最近御主人が病気で亡くなられ、奥さまが一人で、この活動を続けられています。
私はこの話に感動を覚えるとともに、一人の日本人として、頭が下がる思いでした。
それなのに、日本でも韓国でも、互いを非難するようなことばかりです。
全く腹が立ちます。
それぞれの国に、非難を煽っている者がいるのです。
それは相手のことを、悪く見るしかできない人たちだけではありません。
騒ぎを起こすことで、自分たちの立場や方針を、正当化しようともくろんでいる人たちです。
相手を悪く見る人は、まだ話し合うことで、理解し合うことは可能です。
どんなに口汚く罵っていたとしても、あるいは暴力に訴えることがあったとしても、それは相手への理解が、足らないのが理由です。
真心を持って、語り合うことができれば、違う考えを持てるようになると思います。
問題なのは、自分の立場を守るために、わざと騒ぎを大きくしようとする人たちです。
この人たちは、自分が間違っているのは承知の上で、相手を非難するのです。
騒ぎを大きくすることだけが、目的です。
こういう人たちは、何を言っても聞く耳を持ちません。
人として生きるために、何が大切なのかが、わかっていないのです。
彼らの心は病んでいます。
ところが、こういう人たちが、人を指導する立場にいたり、情報を操作できたりするのです。
これでは、いつまで経っても、問題は解決しません。
似たようなことは、どこの国でもあります。
それが、世界中に蔓延している、様々な問題を引き起こしています。
これを何とかするためには、全ての国の国民一人一人が、賢くならねばなりません。
何が正しくて何が間違っているのかを、地球規模で見極めないと、いけないからです。
それと、何度も繰り返しますが、相手への思いやりの気持ちが必要です。
自分勝手な考えや、相手を思いやる気持ちの欠如が、争いの大きな原因です。
この場合、目の前にある争点は、本当の問題ではありません。
本当の問題は、どうして自分勝手な考えになったり、相手を思いやることができないのか、ということです。
生まれながらにして、そんな風になっている人は、世界のどこにもいないでしょう。
みんな、生まれ育つ過程の中で、誰かに言われたり、自分が経験したことなどで、そういう考え方を持つようになるのです。
互いの意見の背景にある、そういう事情を考慮し、相手の立場を理解してこそ、目の前にある問題の解決を、導き出すことができるのです。
そうでなければ、いつまで経っても、どっちが正しいかという議論の、繰り返しになるでしょう。
今日、私が見た番組は、素晴らしい韓国の青年と、家族の話でした。
でも、この方たち以外にも、いろんな国の人が、国境に囚われない、人としての心のつながりを求めて、奮闘しています。
そういう方たちの思いを、感謝を込めて受け止め、少しでもその気持ちに報いるために、自分には何ができるだろうかと、考えようではありませんか。
その気持ちがあれば、愚かな人たちが騒ぎを大きくしようと、煽ったり挑発したりしても、それに乗ることはありません。
みんなが彼らに、同調さえしなければ、世の中は平和で素晴らしい、楽園になるのです。