宇宙の果て その1
宇宙は138億年前に、ビッグバンによって生まれたと、考えられています。
最近の計算では、宇宙の年齢はもう少し若く、114億年という話もあるようですが、ここでは138億年としておきます。
実際に宇宙が、一点から爆発的に拡大してできたのか、あるいは膨張と収縮を繰り返しているのかは、わかりません。
宇宙の起源の話はさておき、宇宙の果ては、どうなっているのでしょうか。
138億年前に宇宙が誕生した時の光が、到達できる距離は、文字通り、138億光年です。
一方、138億年の間にも、宇宙は拡大し続けています。
その結果、宇宙誕生から138億年が経った今現在、宇宙の端は中心から464億光年の所にあるそうです。
光や時空間が、均一に広がる事を前提にしますと、その関係は下の図のようなものです。
ビッグバンが起こった瞬間は、星は存在しません。
形を持たない高エネルギーが広がり、その途中で元素が作られ、星々が生まれたとされています。
星という形を持つと、光と同じような速度では、移動できません。
初めは全てが一緒に広がったとしても、形を持つようになったエネルギーの速度は、やがて落ちて行きます。
光から取り残される格好になりますから、全ての星は宇宙の中心から広がった、半径 138億光年の球体の中に、収まっているはずです。
しかし、宇宙空間は138億年の間も広がり続け、半径 464億光年の球体になっているのです。
単純に考えれば、上の図の赤い円と青い円の間には、星もなければ光もない、ただの暗黒の空間が、広がっているだけになります。
ところで、おおぐま座(北斗七星)の方向にある、GN-z11という銀河は、地球からの距離が約320億光年だそうです。
これでは半径 138億光年の球体の中に、収まりません。
地球かGN-z11のどちらかが、球体の外に出てしまいます。
でも、そこには星も光もないはずなのです。
これは矛盾しますね。
と言うことは、広がる時空間に乗って、星も光も本来の速度以上の、すさまじい速度で移動しているのでしょう。
138億年前に、宇宙の中心から発せられた光は、広がる時空間に乗って、実際には 464億光年先に到達していると、考えられます。
そうすると単純計算では、光の速度は本来の 3.5倍ほどになっているようです。
しかし、拡張する同じ空間にいる者から見れば、光の速度は通常どおりなのでしょう。
何故なら、その人たちも同じ速度で、移動しているからです。
実際、人類の観測で、通常の3.5倍の速度の光を、見つけたという報告はありません。
話をGN-z11に戻しますが、地球で観測したこの銀河の光は、134億年前のものだそうです。
つまり、この星は宇宙誕生の 4億年後には、存在していたということです。
先の図で見ますと、その時のGN-z11の位置は、宇宙の中心のすぐ近くにあったことになります。
それが現在は、地球もGN-z11も互いに離れてしまい、今の実際の距離は、約320億光年と言われています。
ちなみに、太陽系が属している銀河系には、HE 1523-0901という、推定年齢 132億年の星があります。
その位置は、てんびん座の方向に 7500光年離れた所で、地球から比較的近い所と言えます。
この星の存在を考えると、銀河系の年齢も同じぐらいと、見ることができるでしょう。
つまり、宇宙誕生から 6億年後には、銀河系の卵が生まれていたということです。
この事からGN-z11も銀河系も、ほぼ同じ頃に誕生したと考えられます。
宇宙誕生後、互いに真逆の方向に、同速度で移動したとすれば、地球とGN-z11はどちらも、上の図の水色の円周上にあるはずです。
この円の直径は 320億光年なので、お互いに中心を挟んで、向かい合った位置にあります。
しかし、GN-z11が地球と同じ速度で移動しなかったり、別の方向へ移動したとすると、どうなるでしょうか。
それが黄色の円です。
黄色の円は、現在の地球の位置を中心にした、半径320億光年の円です。
現在のGN-z11は、この黄色の円周上のどこかにあるはずです。
ただし、宇宙の端である青い線を、超えていない所です。
上の図の緑の円は、現在の地球から、134億光年の距離を示しています。
GN-z11は宇宙の中心を離れて、過去にこの緑の円と接したはずです。
その時の光が現在の地球に、134億年前の光として、届いたのです。
宇宙の中心から、緑の円に接する直線が、GN-z11の軌跡を示しています。
中心からの円の接線は、二つ描けますので、直線は2本あります。
宇宙には前後左右がありませんから、どちらを選んでも構いません。
実際には、緑色の円は球体であり、2本の赤い直線は、緑の球体に接する円錐の一部です。
平面図に投影しているので、円錐が2本の線となって、描かれているだけです。
そして、GN-z11はこの赤い直線(本当は赤い円錐)の上を、移動するのです。
緑の円に接した時の光が、地球に届くまでの間も、GN-z11はさらに移動します。
そして今現在は、地球との距離が 320億光年ですから、赤の直線と黄色の円の交点に、GN-z11はあるというわけです。
この図からわかるのは、GN-z11が宇宙の中心から、緑の円に到達するまで、138 - 134= 4 で、4億年かかっていること。
そして、緑の円から黄色の円まで移動するのに、134億年かかっていることです。
その距離は、中心から緑の円までの距離の、3倍近くです。
しかし、その距離を移動するのに要した時間は、134億 ÷ 4 = 約34億倍です。
それは空間の広がる速度が、それだけ落ちたということですね。
逆に考えると、ビッグバン直後は、まさにすさまじい速度での、広がりだったと言えます。
それはさておき、こうして見ると、かなり宇宙の果てに近い所に、GN-z11はあるようです。
しかし、現在のGN-z11が発している光は、しばらくの間、地球には届きません。
何故なら、宇宙が誕生してから、138億年しか経っていないからです。
そのため、138億光年を超える距離にある所の光は、まだ旅の途中で、地球には到達していません。
今の地球の科学では、138億光年の距離を超えた所の事は、確かめようがありません。
ですから、実際に 中心から464億光年離れた所に、宇宙の果てがあるのかは、ワープでもできない限り、直接確かめることは、できないようです。