あなたの世界 その1
たいてい私たちは、誰もが同じ世界に存在していると、認識しています。
同じ物を見て、同じ声を聞いて、同じ空気を吸い、同じ食べ物を食べている。
そう理解しているでしょうし、そこに微塵も疑いを持ちません。
でも、本当にそうなのでしょうか。
この世界が、本当に現実なのかという話は、別の記事で述べました。
しかし、今お話していることは、世界が現実かバーチャル世界かは、関係ありません。
この世界が何であれ、みなさんは他の人たちも、自分と同じ世界にいるのだと、信じていると思います。
でも実際は、そうではないのです。
みんなが同じ一つの世界に、存在しているわけではありません。
そのように仕組まれているだけであって、本当は一人一人が、自分だけの世界を体験しているのです。
具体的に説明してみましょう。
たとえば、目の中にある網膜には、光を感じる細胞が、ぎっしりと並んでいます。
その中に、色を感じる細胞が三種類あります。
たった三種類ですが、それぞれの反応を組み合わせることで、頭の中で他の色も、創り出してしまうのです。
テレビやパソコンやスマホの画面も、同じ理屈で作られています。
テレビなどの画面には、とても小さな発光体が並んでいます。
発光体は赤、緑、青の三色あって、それぞれの色を重ねることで、様々な色を作り出すのです。
網膜の細胞も三色の光を感知しますが、その情報は頭の中で合成されます。
そうして三色以外の色を、人は感じるわけです。
しかし、この三種類の細胞の数は、人によって異なっています。
また、生まれつき色を感じる細胞の数が、二種類以下の人もいます。
色を感じる細胞の数が少なくなれば、それだけ認識できる色の種類が減ります。
もし色を感じる細胞が一つもなければ、薄暗い所にいるような、白黒の世界になってしまいます。
たとえ色を感じる細胞が三種類あったとしても、その割合が違うのであれば、同じ物を見たとしても、人によって見えている色が、微妙に違っているはずです。
でも、私たちは他の人も、自分と同じ色を見ていると、信じています。
それに見えている色が、微妙に違うからと言って、それが問題になることはありません。
そのため、自分と他の人が同じ色を見ているという、信念を疑うことはないのです。
その結果、みんなが同じ世界にいて、同じ物を見ていると、解釈してしまいます。
幽霊が見えるという人が、いますよね。
でも、そこに幽霊がいると、その人が指差しても、他の人には何も見えないのです。
そんな話を耳にしたことは、ありませんか。
もちろん、冗談で嘘をついていたり、怖いと思うがゆえに、何かを見間違えるということも、あるでしょう。
しかし、幽霊を見たという人全てが、嘘をついていたり、見間違えをしたと断定することは、間違っています。
幽霊が絶対にいないと、証明できない以上、一つ一つの証言の真偽を、確かめるべきでしょう。
ここでは幽霊の真偽について、述べるつもりはありません。
幽霊が存在するという前提で、話を進めます。
幽霊が目の前にいたとしても、ある人には見えて、ある人には見えないという事があります。
でも、それは別に不思議ではないのです。
幽霊が見えるということは、幽霊が発する可視光線を、感知できるということでしょう。
しかし、幽霊は物質的な身体を、持っていません。
だから、幽霊から発せられる可視光線は、通常の肉体から出る可視光線とは、異なるものだと考えられます。
その幽霊の可視光線を、感知できる網膜の細胞は、特殊なものと言えるでしょう。
その細胞が数多くあったなら、その人は幽霊を見ることができます。
見えない人は、その細胞を持ち合わせていないか、あったとしても、非常に数が少ないはずです。
いくらかでもこの細胞があったなら、今何かが見えたような気がするとか、かげろうのようなぼんやりした、空間の揺らぎが見えるということが、あるかも知れません。
とにかく、幽霊が見える人と、見えない人がいても、不自然なことではないのです。
これと同じ理屈で、音や匂い、味などの感覚も、他の人とは微妙に違っているでしょう。
場合によっては、他の人にはわからない感覚を、覚える人もいると思います。