軍隊は必要か その1
軍隊の必要性について、議論されることがありますよね。
日本の自衛隊が軍隊かどうかという議論も、軍隊の必要性が絡んだ問題です。
日本は軍備を持たないとするならば、自衛隊を軍隊と呼ぶわけにはいきません。
しかし、どこかの国と戦争になったとすれば、前に出て戦うのは自衛隊です。
自衛するための組織ですから、当たり前ではあるのですが、そこで行われることは軍隊のそれと同じです。
呼び名がどうあれ、また普段の活動がどうあれ、自衛隊に軍隊としての顔があるのは否めません。
自衛隊を軍隊とみなすのかどうかは、本来の議論を避けるための、あまり意味のない議論です。
要は、日本に軍隊が必要なのかどうか、という点ですね。
周囲に脅威となる国がいなければ、軍備を持つ必要性はありません。
でも、今は脅威でなくても、将来的に脅威となる可能性があると見るならば、やはり軍備は持っておくべきだろうと、考える人もいるでしょう。
特に、ロシアのウクライナへの侵攻を目の当たりにさせられると、平和で安全な所にいても、いつかそれが崩されてしまうかもしれないと、不安になるかもしれません。
ところで、人間の体には免疫という働きがあります。
この免疫の力によって、細菌やウィルスなど外から侵入してくるものに対抗します。
また、体内に生じる癌細胞に対しても、この免疫力が働きます。
外敵に対抗する意味では、免疫とは軍隊に似ていますし、内なる反乱者を抑える意味では、免疫は警察に似ています。
体という環境を維持するために、免疫は欠かせません。
免疫がなければ、いろんな感染症に冒されてしまいますし、体中を癌細胞に蝕まれるでしょう。
生体にとって免疫機能とは、必要なものなのです。
そう考えると、各国が自国を護り維持するために、軍隊を持とうとするのは自然なあり方でしょう。
ただ、体の免疫細胞たちは、体の環境を維持することが目的なのであって、体の外へ出て行って、離れた所にいる細菌やウィルスを攻撃することはありません。
そういう意味で、他国の領土を奪うために戦争を仕掛ける軍隊は、本来のあるべき姿ではないということです。
もし体の免疫細胞が、同じようなことをしたならば、その人は深刻な病気とみなされることでしょう。
そんな軍隊の必要性は、誰も認めることはありません。
しかし、他国を侵略する軍隊の正当性を主張する方法はあります。
それはそこの土地あるいは海が、元々は自国の領土や領海だったと主張することです。
つまり、それは本来の自国の環境を取り戻すために、軍隊が動いているだけで、決して侵略ではないという論法です。
体の一部を強力な細菌に冒されていたり、癌細胞が増殖して体が大変な状態になっている時に、それらの菌や癌細胞を排除して、元の体を取り戻そうという理屈と同じです。
今のロシア(プーチン)がウクライナを侵略しているのも、この口実を使ってのことですね。
中国が台湾を攻撃する可能性も、この理屈が基盤になっています。
そこは古来より我が国の領土であった、という言葉をよく耳にしますよね。
でも、その根拠となるのは、いつの時代のことなのかと思ってしまいます。
地球が誕生した時、まだ人間はどこにも存在していませんでした。
人間の祖先が現れた頃にも、今ある国はどこもまだなかったはずです。
つまり、古来より我が国の領土という古来とは、今の権力者たちにとって都合のいい時代の話ですよね。
全く馬鹿げた論理です。
そして、そんな論理に従った軍事行動は、理屈に合ったものではありません。
そんな軍隊は存在するべきではありませんし、決して認められないでしょう。
今のロシア軍の姿は、世界中の国々に、軍隊のあり方というものを、根本から考え直す機会を、提供してくれているように思います。
そこには、軍隊が本当に必要なのか、という疑問も含まれることでしょう。