本当の故郷 その1
人には誰にも故郷があります。
通常言われる故郷は、その人が生まれ育った地域や街のことです。
人によったら、ある場所で生まれて、別の場所で育ったということもあるでしょう。
その場合は、両方が故郷ですね。
生まれ育った所ではないけれど、とても気に入った場所があって、そこの人々とも深い関係ができたなら、そこを第二の故郷と呼ぶ場合があります。
実際に、生まれ育ったかどうかではなく、そこに自分の居場所を感じられたということが、故郷という言葉に繋がっているのですね。
故郷という言葉が、辞書などでどう定義されているかに関係なく、自分にとってそこが故郷だと思えば、そこが故郷なのです。
そんな故郷に、事情があって住めなくなる人がいます。
災害や開発などで、故郷が大きく様変わりをしてしまったり、場合によっては失われてしまう場合があります。
あるいは、一度離れた故郷に戻って来たのに、そこには自分の居場所がなくなっていた、ということもあるでしょう。
そもそも自分には故郷があるという実感が、全くない人もいると思います。
それで平気な人もいるでしょうが、自分には故郷と呼べる所がないと、寂しく思う人もいるでしょう。
様々な事情で故郷を失ったり、故郷がなかったりすることで、つらい気持ちになったとしても、新たな故郷と呼べる所が見つかれば、それは大きな安堵となります。
結局、何が故郷なのかと言うと、深い心の繋がりを感じられる場所、ということなのですね。
生まれ育った所が故郷と呼ばれるのは、そこの人々や街や自然に深い馴染みを感じ、そこにいることで安らぎや喜びを得やすいからです。
でも、全ての人がそのように感じられるわけではありません。
生まれ育ったはずの場所で、とても嫌な思いをしてしまい、そこにいるのが辛い人にとっては、そこが故郷だと受け止めるのは、かなりの抵抗があると思います。
それよりも、本当に自分がしっくり来る、仲間や環境が揃っている所の方が、故郷と呼ぶに相応しいと思うでしょう。
今の自分には故郷がないと寂しく思う場合、それは今の自分はしっくりとした居場所を、見つけることができていない、と解釈して下さい。
どこで生まれ育ったかということではなく、居心地のいい所というのがポイントです。
故郷を失って落胆する場合も、新たに居心地のいい所へ向かえ、ということだと解釈すれば、つらい気持ちも和らぐでしょう。
それは物理的に新しい別の場所へ移動する、ということはもちろんですが、元々の場所を新しくすることで、そこに自分の居場所を作る、ということでもあります。
いずれにしても、古い故郷から新しい故郷へ移り住むわけです。
そうして実際に新しい居場所が見つかれば、そこを新たな故郷だと、受け止めるようになるのです。
故郷というものを固定的に捉えるのではなく、自分の居場所という、少し緩い基準で考えるといいと思います。