ミクロの世界の知恵
生き物の世界は、実に不思議です。
保護色も不思議ですし、貝が貝殻で身を守るのも不思議です。
昆虫をおびき寄せて食べてしまう植物も不思議ですし、空を飛べる鳥も不思議です。
言い出したら、きりがありませんが、そんな不思議がミクロの世界でもあります。
バクテリアと呼ばれる細菌とは別に、カビ・キノコ・酵母などを菌類と呼びます。
この菌類は、植物のように自分では養分を作れないので、腐葉土などに菌糸を伸ばして、そこから養分を摂取します。
そんな菌類の中に、線虫捕食菌というのがあります。
NHKで紹介していました。
この線虫捕食菌は、他の菌類と同じように、腐葉土などから養分を摂るのですが、線虫という目に見えない小さな細長い虫を、捕まえて食べたりもするのです。
その方法は、三つの細胞で作られた小さな輪で、線虫を捕らえるのです。
線虫捕食菌の本体の、所々にあるこの小さな輪の中を、線虫が潜り抜けようとすると、この輪がきゅっと縮まって、線虫を捕らえます。
そして、その線虫の中に菌糸を伸ばして、線虫から養分を吸い取るのです。
学者に言わせれば、何かの偶然に出来た細胞の輪が、たまたま線虫を捕らえるのに、役に立ったということでしょう。
しかし、ミクロの世界の生き物たちにも、人間にはわからないような意識や思考があり、ちゃんと目的を持った上で、自らの構造を変えたり、ある動きを取るのだと、私は考えています。
線虫捕食菌は、捕らえる獲物がどのような形態をしているのかを、理解しているからこそ、獲物の大きさにぴったりの輪を、作ることができたのでしょう。
とは言っても、それは人間が考えるような理解ではありません。
ミクロの生き物の理解とは、その生き物の集団意識あるいは全体意識でのものだと思います。
どのような意識が、周囲をどのように認識し、どう理解するかで、その生き物が感じている世界は、違って来るはずです。
同じ空間にいるはずなのですが、彼らが認識している世界は、人間が知る世界とは全然違うものでしょう。
それは菌類だけでなく、他の生き物全てに言えることです。
どの生き物も、自分たち独自の世界を生きているはずです。
たとえば、犬や猫が認識している人間という存在は、私たちが認識している人間とは、別のものなのです。
言い換えれば、私たちが唯一であると信じているこの世界も、人間が認識している世界に過ぎず、絶対的なものではないということです。
意識が違えば、認識する世界が異なるということは、私たちが世界の中にいるのではなく、世界の方が、私たちの中に存在しているということですね。
誰かが死んでも世界は残りますが、それは一個人の話です。
人類全体の集合意識の中に、私たちが暮らす世界が存在していると考えればいいのです。
そんなことを、微生物が教えてくれました。