衣替え その1
寒くなると言われて、暖かい服装になったのに、またしばらく暖かくなって、用意していた厚着をやめる。
すると、また寒くなって、厚着を着るけど、また暖かくなる。
こんなことを繰り返すことが、毎年のようにあります。
昔と比べて季節感がなくなり、春と秋が短くなったように思います。
かと言って、夏にしても夏らしくなく、冬と言っても冬らしくない。
そんなどっちつかずの気候に、服をどうするのかと、右往左往させられてしまいます。
それでも、その日の天候に合わせて、面倒臭がらずに適切な衣服を選べば、快適に過ごすことは可能です。
もう夏だから、もう冬だからと、その日の状況に応じずに、薄着や厚着に決め込んでしまうと、とても居心地の悪いことになるでしょう。
このことは人間の持つ価値観にも、同じことが言えるのです。
昔は通じていた価値観が、今では通じなくなったということは、よくある話です。
それを最近の世の中や、最近の若者のせいにして、愚痴をこぼす人は、結構いるのではないでしょうか。
しかし、価値観も衣装と同じで、その時の状況に応じて、変える必要があるのです。
たとえば男が外で働いてお金を稼ぎ、女が家事をこなして子育てをする、という考え方は、昔はごく当たり前のものでした。
男の人も苦労はありましたが、女の人は男に従うしか生きる道がなく、男と比べると、自由を謳歌する余裕などありませんでした。
それでも、世の中みんながそんな考えで動いていましたから、それに逆らうことはできませんし、自ら男を支える生き方を、誇りを持って選ぶ人もいたようです。
しかし、今はこんな考え方は通じません。
まだまだ世の中は男尊女卑の構造ではありますが、女は家を守るものだなんて公言すれば、即座にセクハラ、パワハラと叩かれることでしょう。
今は基本的に、女性にも生きる道を選ぶ自由があります。
世の中の価値観が、昔とは大きく変わっているのです。
それなのに、古い価値観を手放せない人は、新しい世の中の流れについて行けず、かなりの苦労と不自由、不快感を味わうことになります。
これは、夏はこうだ、冬はこうだと言って、昔とは大きく変化した今の気候の中で、昔の衣替えにこだわる人は、大変な思いをするというのと同じです。
時代の流れを見極め、人々の好みや望みを理解する。
それができれば、価値観の衣替えはむずかしくありません。
ただ、他の人とのつながりを、重視していない人は、人は人、自分は自分だと言って、同じ価値観を持ち続けるかもしれません。
でも、それは本人の自由です。
その人が、それで居心地が悪くない、あるいは居心地が悪くても、我慢が出来るというのであれば、同じ価値観を抱き続けても、何も問題はありません。
しかし、他の人の気持ちを思いやれる人は、居心地が悪くなった価値観は、服を着替えるように、さらりと変えるのがいいと思います。