ウィルスは生物か その2
ウィルスの本質は遺伝子です。
ウィルスを覆う外殻に関する情報も、この遺伝子の中にありますから、寄生した細胞内で増殖する時に、遺伝子と一緒に外殻も作られます。
ですから、ウィルスの本質は遺伝子だと考えて、いいと思います。
そうすると、面白い問題が出て来ます。
ウィルスを非細胞型生命体と考えるとことは、遺伝子が非細胞型生命体であると、いうことです。
遺伝子は細胞の中にある、一つの器官、あるいは細胞の一部、というわけではなく、それ自体が生命体なのです。
しかし、非細胞型生命体という考え方をすると、細胞内にある遺伝子以外の物質や構造体も、全てが生命体ということになります。
すなわち、細胞型生命体というものは、非細胞型生命体によって、構成されていると言えるわけです。
全てが元は一つで、全てが生命であるとするならば、当然と言えば当然ですが、従来の生物=生命という考え方から見ると、とんでもないことに思えるでしょう。
恐らく、ウィルスを生物をして認めることができない、という理由の一つに、遺伝子も生物にしなければならなくなる、ということがあるはずです。
細胞にとって遺伝子というものは、細胞の設計図であり、細胞活動の説明書でもあります。
細胞は自らの内にある、遺伝子の情報に基づいて、自分の形や構造を作り、それぞれの活動を行います。
設計図にせよ、活動説明書にせよ、人間で言えば、それは思考が具現化されたものであり、知性の一部が表現されたものです。
細胞意識というものを考慮すると、遺伝子とは細胞意識の知性が、具現化されたものと言えると思います。
ところで、感染症にやたらに抗生物質を使用すると、その抗生物質に対する耐性菌ができます。
多くいる菌の中には、ごく一部に抗生物質を分解するなど、抗生物質に対抗できる力がある菌が存在しています。
この菌自体は、抗生物質に対する耐性を持っているわけです。
でも、その数は全体の中の、ほんのわずかです。
しかし、菌全体が抗生物質の脅威に曝されると、この耐性を持つ菌は、耐性遺伝子を周囲の仲間の菌に、手渡しするようにして配ります。
こうしてほとんどの菌が、抗生物質の耐性遺伝子を手に入れると、もうその抗生物質は効かなくなるのです。
この現象はとても興味深いと思いませんか。
ある菌は、抗生物質への耐性遺伝子が、自分の中にあると、わかっているのです。
また、他の菌が抗生物質にやられて、死滅して行くのを理解しているのですね。
だからこそ、自分の耐性遺伝子を、他の菌に配って回るということが、できるのです。
そんな認識ができるのは、まさに知性があるということでしょう。
たかが菌という見方をするのは、間違いであると言えます。
同じ状況を、人間に置き換えてみると、危機に直面しながら、どうしたらいいのかわからない人々に、危機への対処法を知っている人が、それを伝え回っている、という感じでしょう。
それは、声かもしれませんし、チラシに書いたメッセージかもしれません。
いずれにしても、それは意思疎通の手段であるわけです。
生命の世界には、人間が及びもつかないような、意識や思考の形態が、存在しているのですね。