内子に思うこと
夏のような日が続いていたので、梅雨が開けたような気になっていました。
でも、今日からまた雨がしばらく続くようです。
昨日は内子を訪れました。
内子と書いて、「うちこ」と読みます。
江戸時代の頃には、内ノ子(うちのこ)と呼ばれていたそうです。
愛媛の観光と言えば、松山城と道後温泉が挙げられますが、どちらも松山市にあります。
内子は愛媛の中で、松山に次いで人気のある観光地です。
江戸時代末期から明治時代にかけての、街並みが保存されている、歴史を感じさせてくれる所です。
松山から国道56号線を、一時間ほど南下した所に、内子はあります。
もう少し先へ進むと、大洲市です。
大洲市にはお城があり、江戸時代には、松山とは別の領主が治めていました。
内子は、この大洲の支配下にありました。
内子は盆地になっていて、周辺の山から三本の川が集まり、一本に集約される地形です。
この川はその先で、肱川(ひじかわ)という大きな川と合流し、大洲の城下町の脇を通って、瀬戸内海へと注ぎます。
かつて川は物資を運ぶための、重要なルートでした。
また、内子からは往還と呼ばれる道が、何本も放射状に出ていて、周囲の山村と結ばれていました。
このような立地のお陰で、内子は物資を集める拠点として、発展しました。
元々内子は、お寺の門前市として栄えた町です。
中世に、この辺りを治めていた河野氏は、海の向こうの芸州(今の広島西部)の厳島から、ありがたい荒恵比寿を勧請しました。
本家の厳島では、恵比寿さまのご開帳はなかったのに、こちらでは毎月二十日の市に合わせて、ご開帳したと言います。
それで恵比寿さまの姿を拝もうと、市の日には遠方から大勢の人が訪れて、市は大いに繁昌したそうです。
その他にも、遍路や金比羅参りの道も、内子を通っていますし、松山と大洲を結ぶ街道もあります。
そのため内子は、旅人も多く訪れる宿場町でもありました。
このように、いろんな点で恵まれていた内子は、発展するべくして発展したと言えます。
しかし、時代の流れで町の勢いは失われ、今は昔を偲ぶ観光地になっています。
ただ、観光客が訪れるのは、土日や祝日などの休日が中心で、平日は閑散としています。
特に今の時期は、外国人観光客がいませんので、観光地としては頭を抱えている事と思います。
昨日は平日だった事もありますが、街並みを歩いている人は、一人もいませんでした。
でも、このような事は全国の観光地、特に中心地から離れた地域では、どこでも見られる光景でしょう。
何とかしてあげたいと思うのですが、どうにもなりません。
ところで、内子のような田舎の観光地が、人を呼び込もうと努力するのは、単純に観光客相手の、商売のためだけではないと思います。
その背景には、一次産業の衰退や後継者不足、町の高齢化や過疎化があるのです。
元々の仕事で収益を増やす事が、様々な要因で困難になっています。
若い人がいなければ、独自に全国展開するような仕事も、簡単には行きません。
ですから、その地域を訪れた人に、町を気に入ってもらい、若い人に移住してもらおうという、期待もあると思います。
内子のように、観光で人を呼べる地域は、まだいいでしょう。
観光材料がない所は、本当に大変だと思います。
日本人の食や、暮らしを支えているのは、地方の方々です。
地方がだめになるというのは、中央もだめになるという事です。
二つを分けて考える事はできません。
地方の活性化という声は、選挙のたびに聞かれます。
でも、その言葉を実現しようとする、国会議員は皆無のように思われます。
では地方は、このまま廃れてしまうのかと言うと、そうではないと思います。
都会を離れて、生まれ故郷である田舎に、戻る若者がいます。
見知らぬ田舎へ、自然と人間味のある暮らしを求めて、移住する若者たちがいます。
私は彼らに、期待したいと思います。
定年後に田舎へ、移り住む人を紹介する、テレビ番組があります。
でも、大概が実家へ戻るとか、周りがみんな知人で、いろいろ手伝ってもらえるとか、あるいは資金的に余裕がありそうだとか、条件に恵まれている方たちばかりに見えます。
憧れはするけれど、真似できないなと思う視聴者は、多いのではないかと思います。
若いうちには移住は無理だなと、番組を見た若い人に、思われるかも知れません。
それは地方にとっては、いい事ではないでしょう。
これからは田舎へ移住して、新しい仕事や暮らしにチャレンジする、若い人を紹介する番組を、テレビ局には作ってもらいたいですね。
どういうきっかけで、その地域を選んだのか。
移住するための資金や、仕事はどうするのか。
子供が産まれたら、学校はどうなるのか。
病院や買い物など、不便に思われる事について、どう考えているのか。
正直なところ、田舎のどういう所が、馴染むのに大変なのか。
逆に、田舎で暮らして嬉しかったことは、何なのか。
そんな情報を発信しながら、地方で元気に暮らす若者たちの姿を、全国番組で紹介するのです。
そうすれば、きっと地方をめざす若者は、今よりぐっと増えると思います。
憧れはあるけど、ためらいもあるという人がいるのなら、その理由を徹底的に、確かめるのです。
理由がわかれば、国や地方の自治体できちんと対処して、移住希望者が安心できるような環境を、どんどん整えればいいのです。
子供の親御さんも、普段から地方の素晴らしさを、子供たちに伝えた方がいいと思います。
都会が都会でいられるのは、地方のお陰である事を、ちゃんと教えてあげて下さい。
地方は仕事がないとか、お店や遊ぶ所がないとか、年寄りばかりだとか、悪いイメージばかりが、強調される傾向があると思います。
そんな事ばかり聞かされていれば、地方で暮らそうと思わない人が、増えるのは当然です。
そうではなく、地方だからこその楽しさや可能性、みんなの生活を守っているという誇り、そういう事を、子供に伝えてやらねばなりません。
また、大人もその事を、再確認、再認識するべきです。
何度も繰り返しますが、地方の方たち、特に農業や漁業、林業などに携わっている方たちへの、感謝と思いやりの気持ちを、子供たちが持てるような、教育を望みます。