砥部焼(とべやき)
今日は家内と義母、私の三人で、砥部焼のイベントへ行って来ました。
松山から国道33号線を南へ進むと、久万高原の山があります。
その山の麓辺りが砥部の町で、古くから焼き物が作られていたと言います。
砥部焼の特徴は、厚ぼったくてぽってりした感じです。
とても丈夫で、他の食器と喧嘩をしても、まず負ける事はなさそうです。
伝統的な柄は、白地に紺の唐草模様ですが、最近は若い作家が増えて、いろんな模様や絵柄のものがあります。
特に女性作家が増えているそうです。
伝統的な模様は、力強くて男性的です。
それに対し、現代風の図柄や模様は、柔らかく温もりのある、女性的なものが多いようです。
今回は義母や家内が気に入った、お皿やカップが見つかったので、みんな大満足でした。
ところで、砥部焼の歴史を調べてみると、とても面白いのです。
砥部は、元は砥石で有名な土地だったそうです。
その砥石を切り出す時に出て来る、砥石の屑の処理がかなりの重労働で、村人たちから苦情が出るほどだったと言います。
江戸時代には、砥部は松山ではなく、大洲の殿さまの領地でした。
当時の大洲は経済的に、かなり大変だったそうです。
それで、砥石の屑で磁器ができる、という話を聞いた殿さまが、1775年 (安永4年) に、家臣に磁器を作るよう、命じたそうです。
しかし、初めての事なので、作業は順調に進まず、何度も失敗が繰り返されました。
そして、2 年半後の1777年 (安永6年)、ようやく白い磁器が誕生しました。
これが砥部焼の始まりです。
この頃の白というのは、少し灰色がかった白だったと言います。
しかし 1818年 (文政元年) には、新たな陶石が発見され、より白い磁器が作られるようになったそうです。
砥部焼が厚手に作られているのは、実用的であるためです。
砥部焼は壊れにくく、手に持っても料理の熱さを、感じにくいのです。
逆に言えば、料理が冷めにくいわけです。
値段も手頃で、庶民が購入しやすいというのも、特徴だそうです。
そうは言いましても、最近の砥部焼の中には、そんなに厚みがない物もあります。
まあまあいいお値段の物も、結構あります。
単なる実用品ではなく、芸術性も備えた実用品という物ですね。
その値段を高いと見るか、高くないと見るかは、買い手の価値観によるでしょう。
芸術性やオリジナリティを、評価しない人にとっては、何でそんな値段なのと、憤慨したくなるかも知れません。
しかし、その作品をとても気に入った人は、全然高くないと思うでしょう。
また、作家あるいは職人たちが、その作品を作るために、どれだけの努力と工夫、そして忍耐を続けて来たのかと、考えられる人は、妥当な値段だと思うに違いありません。
食器に限った話ではありませんが、どんな物でも、それを作った人がいるわけです。
そして、それをどんな想いで作ったのかを考えると、安い値段で買うのは、申し訳ない気持ちになってしまうでしょう。
自分が作品を作る側だったら、これより安い値段を言われたら、どう思うだろうと考えると、この値段は高過ぎるとは、なかなか言えないと思います。
とは言っても、現実の話として、手持ちのお金がそこまでなければ、いくら妥当な値段だと思っても、それを購入する事はできません。
作家の方にしても、作品を評価してもらえても、買ってもらえなければ意味がありません。
ここの所のさじ加減が、むずかしいのでしょうね。
しかし、毎日使う物であれば、見た目は高くても、高いとは思えなくなってしまいます。
少し無理をしたら買えなくはない、というような値段であれば、私なら絶対に買ってしまいます。
何故なら、それで毎日の暮らしが楽しくなるのであれば、逆に安いと思うからです。
同じ物を食べるにしても、食器が違うだけで、美味しさが変わって来ると思います。
生活に彩りを添えてくれる物は、有り難い物です。
実際に購入するかどうかは別にして、そういう物の価値というものを、確かめて楽しめば、それだけでも人生は、豊かなものになるでしょう。