ちっちゃな、おじいさん
ゆうくんは、きめました。
おにいちゃんに、あそんでほしいと、ちゃんと、いうことに、したのです。
「ねえ、おにいちゃん」
ゆうくんは、おにいちゃんを、見つけると、こえを、かけました。
おにいちゃんは、ゆうくんを、ちらりと、見ました。でも、へんじも、しないで、にげるみたいに、げんかんへ、いきました。
ゆうくんは、おにいちゃんの、あとを、おって、げんかんへ、いきました。
おにいちゃんは、いそいで、じぶんの、くつを、はいています。
ゆうくんは、おにいちゃんに、いいました。
「おにいちゃん、ゆうくんと、いっしょに、あそぼ」
おにいちゃんは、ゆうくんを、見むきもしないで、言いました。
「い・や・だ」
ゆうくんは、ちょっと、かなしくなりました。
「おにいちゃん、どこ、いくの?」
「どこだって、いいだろ? おまえには、かんけい、ない」
おにいちゃんは、そっけなく、いいました。それでも、ゆうくんは、あきらめません。
「ゆうくんも、いっしょに、いく!」
「だめ! おまえなんか、つれてかない!」
おにいちゃんは、げんかんの、とびらを、あけると、さっと、そとへ、にげました。
ゆうくんも、はだしのまま、とびだしました。きょろきょろと、おにいちゃんを、さがすと、おにいちゃんは、むこうの、ほうへ、はしっていきます。ゆうくんは、おにいちゃんを、おいかけました。
「まって、おにいちゃん! ゆうくんも、いく!」
ゆうくんは、ひっしに、はしりました。だけど、おにいちゃんは、ゆうくんよりも、足が、はやくて、どんどん、とおくへ、はなれていきます。
とうとう、おにいちゃんは、見えなくなりました。それでも、ゆうくんは、おにいちゃんが、見えなくなった、あたりまで、はしっていきました。
そこには、赤くて、へんてこな、かたちの、ものが、たってました。それを見て、ゆうくんは、おもいだしました。いつだったか、わすれたけれど、ここは、おとうさんに、つれてきてもらった、ことが、ある、ところです。
赤い、へんてこりんな、ものの、むこうには、りっぱな、おうちが、たっています。これは、かみさまの、おうちなんだって、まえに、おとうさんが、いってたような、気がします。でも、ゆうくんは、かみさまが、だれなのか、よく、わかりません。
かみさまの、おうちの、まえには、ひろばが、あります。ゆうくんは、へんてこな、かたちの、ものの、下を、とおって、ひろばに、入りました。そこに、おにいちゃんが、いるんじゃないかと、おもったのです。
だけど、ひろばには、だれも、いませんでした。
ひろい、ところに、ひとりぼっちで、いると、ゆうくんは、かなしくなりました。
「おにいちゃん、どこ? ゆうくんと、いっしょに、あそぼうよ」
なきそうに、なりながら、ゆうくんは、ひろばを、見まわして、いいました。だけど、おにいちゃんの、へんじは、ありません。
ゆうくんは、かみさまの、おうちの、まわりも、たしかめました。おうちの、下も、のぞきました。だけど、おにいちゃんは、どこにも、かくれてませんでした。
ゆうくんは、がまんが、できなくなって、わあわあ、なきだしました。なきながら、そこに、しゃがむと、おひざを、かかえて、なきつづけました。
どのくらい、ないていたでしょう。
しばらくすると、ちかくで、じゃりっと、すなを、ふむ、おとが、しました。
「おにいちゃん?」
ゆうくんが、かおを、上げると、ゆうくんの、目の、まえに、白い、きものを、きた、おじいさんが、つえを、ついて、立っていました。
おじいさんと、いっても、とても、ちっちゃな、おじいさんです。しゃがんでいる、ゆうくんと、おなじぐらいの、大きさです。ゆうくんが、立ち上がれば、きっと、おじいさんは、ゆうくんの、おへそぐらいの、たかさでしょう。
おじいさんの、あたまに、かみのけは、ありません。つるっつるです。そのかわり、あごの、下には、じめんに、とどくような、ながい、ながーい、おひげが、ありました。
ゆうくんは、こんなに、ちっちゃな、おじいさんを、見たことが、ありませんでした。だから、なくのを、わすれて、大きく、あけた、目で、おじいさんを、見ていました。
おじいさんは、たのしそうに、にこにこ、しています。